「上がり寸」採り着心地に満足
佐田社長が「オーダースーツ」に本格的に取り組むのは、2011年の東日本大震災後のこと。再生ファンドに会社を売却したあと、かつての同僚が会社の経営を担っていたが、08年のリーマン・ショックと震災が影響して、屋台骨がまた揺らぐ。そこで、経営の舵取りを要請されたのだった。
「震災があった11年7月期の売り上げは17億円。わたしが会社を辞めた直後の08年7月期の売り上げは24億円だから約30%減。経営状態は下降線だった」と、振り返る。
2度目の社長就任時、売り上げで大きな割合を占めていたのは、総合スーパーなどへの卸売りとアパレルメーカー相手のOEM(相手先ブランド名での製造)。そこで、佐田社長は自前の努力で成長のチャンスを拡大できる小売業への転換を決意したという。
「オーダースーツSADA」の仕立ては、かつての手縫いに匹敵するほどの品質で、初回限定ではあるが、破格の1万9800円で購入できる。それは、コンピューター支援設計(CAD)と自動裁断システム(CAM)を駆使した「マシンメイド」によって実現したコストパフォーマンスだ。
お客を迎えるショールームでは、ジャケットとパンツに分けて計15~20か所を採寸。「それらはヌード寸といいますが、これだけではオーダースーツはできません。SADAでは、個人差がある『ゆとり』の程度や場所のための『上がり寸』を採って、着心地に満足いくようにしています」。
さらに佐田は早いうちから中国に投資。最新鋭の設備を備え、かつ従業員の研修が行き届いた工場を北京に持っている。この工場で標準的な製品を安価なコストで製造でき、高級仕立てなど特別仕様のものは宮城県の工場で受け持つなどの棲み分けにより、効率化している。
SADAのオーダースーツは、口コミやインターネットで評判が広がり、売り上げを順調に伸ばした。18年7月期決算のそれは34億円で、11年7月期の2倍に増えた。