社会人3年目に、転職を考える人は少なくない。
政府は残業時間の是正や休暇取得の推進など、ワークライフバランスの向上を目指す「働き方改革」を提案。多くの企業が職場改善に取り組んでいるものの、結果として「3年目の壁」が大きく立ちはだかっていることが、東京未来大学の「仕事のモチベーション」に関する調査でわかった。
仕事への「やりがい」45.3%
仕事に慣れてきた入社3年目のころに転職していく社員の存在は、会社にとってイタい。 厚生労働省が2018年10月23日に発表したデータによると、大卒者の就職後3年以内の離職率は31.8%で、10人中3人が転職などのために離職。そこで若手社員の仕事に対するモチベーションの変化について、東京未来大学が転職経験のない社会人3年目の男女300人を対象に、初めて調査した(2018年12月13日発表)。
それによると、実際に自分が勤める会社で「働き方改革」を実感できているか、の問いに「はい」と答えたのは33,7%。約7割が「実感していない、わからない」と答え、若手社員にまで浸透していない様子がうかがえる結果となった=図1参照。
具体的な社内の取り組みについて、最も多かったのは休暇取得などの「ワークライフバランスの向上」が47.4%。次いで「長時間労働の是正」の41.7%だった=図2参照。
「仕事のモチベーションがどのような状況だと上がるか」との問いには、「給与が上がる」(61.0%)と「休暇が取得できている」(60.0%)が、6割を占めた。次いで「社内の人間関係がよい」が55.3%、「十分な睡眠時間が確保されている」46.7%、「週末の楽しみがある」が45.3%。仕事への「やりがいを感じている」は45.3%だった。
仕事のやりがいを追求するより、?活していくため、プライベートを充実させるために働いているという現実的な姿がうかがえる。
角山剛学長は、「一般的に若いうちは給与や仕事に対する不満はあるもので、仕事をするモチベーションが外的な刺激の休暇や給与にあるというのも決して悪いことではない」とし、ワークライフバランスの向上は、仕事を続ける意欲に好影響が期待できるそうだ。
ターニングポイントの3年目、自分の仕事を再確認
さらに、社会人1年目から3年目の仕事のモチベーション度合について0~10点で調査したところ、男女ともに直線的に低下し、3年目は4.7点と5点を下回った。
特に女性は男性よりもモチベーションがやや高いが、1年目6.2点から2年目5.3点と急激に低下している=図3参照。角山学長によると、「3日、3月、3年」とよく言われるように、入社して間もない頃は他社に入った友人を羨み、仕事に興味が持てないという経験をしつつ、3年目で一度やる気がなくなるパターンは実際よく見られるという。
ところが「3年」を乗り越えると、成功や失敗の経験を重ねるうちに仕事にも慣れて、おもしろさがわかってくる。職場への愛着が生まれ、お金のためだけでなく仕事のやりがいを感じることができるようになるそうだ。
社会人3年目のモチベーション度合の理由を聞いたところ、ポジティブな理由では「趣味や娯楽などの楽しみがある」(22.3%)がトップとなり、仕事内容ではなくプライベートの充実がモチベーション向上につながっていることがわかった。
その一方で、ネガティブな理由は「仕事に対してやりがいを感じることができない」(28.0%)や「給与が仕事に見合っていない」(24.0%)など、モチベーションが低い人は仕事内容や会社の環境に要因があることが判明。仕事に対して関心が低い、もしくは仕事に対してよいイメージを持っていない若手社員が多い可能性が示唆された。
こうしたことから、仕事に対するモチベーションを自分自身で管理できていない、モチベーションについて十分な知識がない人が多いことが考えられるという。
また、1年目から3年目にかけてモチベーションが低下し続けていることや、3年目のモチベーション度合の理由=図4参照=からも、社会人3年目が転職のタイミングとなってしまいやすい傾向が垣間?える。
とはいえ、これまで続けてきた仕事を一度整理することで、新たな発見や新しい工夫につながる場合がある。仕事への慣れは、意欲の減退や注意の散漫といったネガティブな面もあるが、とらえ方次第で飛躍するチャンスを秘めている。年始めに「仕事の棚卸し」をしてみるといいだろう、と角山学長は提案している。