英国が欧州連合(EU)と合意したEU離脱案の採決は、保守党内から大量の造反者が出て、432対202という歴史的な大敗北となった。
強硬離脱派も、残留派も反対し、労働党からは内閣不信任案が出された(下院で否決)。EU側は当然ながら失望を表明し、メディアでは「合意なき離脱の可能性が高まる」との見出しが踊っている。
「合意なき離脱」は表向き カギは「労働党」にあり
しかし、英ポンドはそれにも関わらず売られていない。「合意なき離脱」の可能性が高まっているのであれば、英ポンドはもっと売られていていいはずだ。つまり、表向きの混乱とは裏腹に「合意なき離脱」の可能性はやはり低い。そして今後ますますその可能性が低いことが明らかになってくるだろう。
離脱案が否決されたので、メイ首相は3日以内(1月21日)に代替案を出すことになっているが、この代替案もどうなるかわからない。
とはいえ、今後は野党の労働党との折衝が始まる。その中で、与野党の多くの議員はソフトな離脱案か再度の国民投票を希望しており、強硬離脱派はあくまで少数意見ということが明らかになってくるだろう。
そして、万が一「合意なき離脱」の可能性が高まった場合、多くの議員は一致団結してそれを阻止するということがはっきりしてくるだろう。
つまり、双方の多数派である労働党と保守党の穏健派が合意して超党派的な連合ができれば、簡単に終わる問題なのだ。
英ポンドが再評価されるときがやって来る!?
ところが、そこに英国の政治事情が絡むので、スッキリとは進まない。メイ首相の頑な態度が、すんなりと合意に向かう道を閉ざしているとも言えるし、態度をはっきりさせないコービン党首が障害になっているとも言える。
労働党は、結局どうしたいのか――。はっきり態度を表明しなければならない。ソフトな離脱案で行くのか、それとも再度の国民投票を行うのかだ。それがはっきりすれば、超党派の連合も形成しやすくなるだろう。
筆者は、ソフトな離脱案が結局成立する可能性が6、7割、再度の国民投票の可能性が3、4割と見たい。「合意なき離脱」(個人的には残念なことに)は、かなり確率は低いだろう。
現在、外国為替市場で少しずつ英ポンドが買われ始めているのは、結局「合意なき離脱」という選択肢が消えて、英ポンドが再評価され買い戻される。その動きを先取りしつつあるのでしょう。
英ポンドは極めて安い水準に放置されていたので、戻り始める(価値が上がる)とかなりのポテンシャルがある。そして、「合意なき離脱」の選択肢が消えることは、この(2018~19)年末年始に不安定化していた市場に安心感を取り戻す。
過度な悲観にさらされていたが、過度な悲観からの巻き戻しが今後、起こる可能性が高まっているのかもしれない。(志摩力男)