2019年1月16日、東京都が旧築地市場の跡地に国際会議や展示会を開くことのできる大規模施設を核とした再開発を検討していると、共同通信が報じた。それによると、「東京都は25日にも、街づくりの素案を公表して意見を募り、本年度中に正式案をまとめる」としている。
しかし、日本国内には国際会議や展示会を開催できる大規模な「MICE」(Meeting=会議・研修・セミナーやIncentive tour=報奨・招待旅行、 Convention・Conference=大会・学会・国際会議、Exhibition=展示会――の開催が可能な大規模施設の総称)が多くあり、「ムダなハコモノ」になる懸念がある。
日本全国、MICEだらけ!
東京都中央区の旧築地市場の広さは、約23ヘクタール(23万平方メートル)。現在、2018年10月に市場が江東区の豊洲市場へ移転したことで、解体工事が進められており、2020年の東京五輪・パラリンピックでは選手や関係者用の駐車場として使用することが決まっている。
ただ、オリンピック後の活用方法については決まっておらず、東京都は活用法を検討している。その中で今回、国際会議や展示会が開ける大規模MICEが浮上してきたわけだが、国内には以下のように、すでに多くのMICEがある。
加えて、大阪府が夢洲(ゆめしま)に計画しているカジノを併設した統合型リゾート施設(IR)でも、大規模なMICEの建設が計画されている。これだけのMICEがあるのだから、今後建設されるMICEにどれだけの需要が見込めるのかは不透明な状況だ。
さらには、数少ないイベント需要を国内のMICE同士が「食い合い」を繰り広げる可能性はとても高い。そうなれば、稼働率の低下するMICEが出てくることになる。
お相手は海外にも、国を挙げてのMICE誘致競争
じつは、国内には「グローバルMICE都市」と呼ばれる、国(観光庁)がMICEの誘致を後押しする都市が12ある。札幌市、仙台市、東京都、千葉県・千葉市、横浜市、愛知県・名古屋市、大阪府・大阪市、神戸市、京都市、広島市、福岡市、北九州市がそれ(2018年12月時点)。海外の競合国・都市との厳しい誘致競争に打ち勝ち、日本のMICE誘致競争をけん引することができる、実力ある都市を育成するという。
オリンピックや万国博覧会とは言わないまでも、国際的な会議や展示会などは数多く開かれている。世界中の人々が訪れるのだから、その開催は国や自治体にとって一大イベント。国・地域を世界中にアピールする絶好の機会ととらえているのは、何も日本だけではない。国際的なMICE誘致競争は年々激しさを増しているのだ。
つまり、「東京」のライバルは世界と、この11の自治体になるわけ。ご承知のように、イベントが頻繁に開かれる保証がないばかりか、稼働しなくても「ハコモノ」には維持費はかかり、その費用は税金で賄われる。
旧築地市場跡地の活用については、安易に大規模MICEを建設するのではなく、東京都民のために、本当に利用価値の高い活用方法を検討すべきではないのか。(鷲尾香一)