「下町ロケット」はブラック企業か?!(前編)ネットで話題、専門家に聞いた

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「夢」を使って「やりがい搾取」をしている

   ビジネスサイト「bizSPA!」の「『下町ロケット』に20代がドン引き!社長が土下座って...『熱すぎるシーン』5選」(2018年11月18日付)

   では、次のようなシーンに違和感を覚える若者の声を紹介している。

   「(ギアゴーストを)助けてあげたい。これは俺のわがままだ」と泣きながら社員の前で土下座する佃社長。「それでこそ社長だ」と、思わず社員全員が立ち上がるが......。

「社長に土下座されたら反対したくても反対できない。社員を黙らせるための新手のパワハラ?」(27歳・男性)

   経理部長の殿村直弘(立川談春)が実家の農業を継ぐことを決める。辞められてしまえば会社としてはかなりの痛手。だが、佃社長は「俺に背中を押させてくれ」と辞めることを応援したばかりか、実家の田植えまで社員を引き連れて手伝ってしまう。これには、経営能力を疑問視する声が――。

「佃社長、実家の田植えまで手伝った社員に辞められちゃうなんて。それでいいの?」(27歳・男性)
「会社全体の損得が見えなくなるのは社長としてどうなの?」(24歳・男性)

   といった具合。

   また、「自分がいない間に社長が実家の稲刈りを手伝っているとか、怖すぎる」(24歳・男性)、「社長に実家の場所を知られるのは嫌」(28歳・男性)と、若い社員は社長との距離がベタベタな関係を嫌うようだ。

   こうした中でも特に大きな反響があったのが、経済ニュースサイト「ITmediaビジネスオンライン」で、ノンフィクションライターの窪田順生氏が書いた「『佃製作所はやっぱりブラック企業』と感じてしまう3つの理由」(2019年1月6日付)だ。窪田氏は、こう警鐘を鳴らした。

「日本の労働現場であらためなくてはいけない『悪しき労働文化』が、肯定的に描かれているどころか、現実にはあり得ないほど美化されている。......アマチュアスポーツ団体などで体罰・パワハラ上等というゴリゴリの体育会カルチャーが根付くこの国で、常軌を逸した体罰やしごきを美化するスポ根アニメ・ドラマが公共電波でじゃんじゃん流されていたことを踏まえれば、『下町ロケット』が労働現場に与える影響を見くびってはいけない」

   そして、「下町ロケット」には次の3つの問題点があると指摘する。

(1)佃製作所の佃航平社長による「やりがい搾取」
(2)長時間労働を強いる職場の同調圧力
(3)とにかく気合いで乗り切る精神至上主義

   (1)の「やりがい搾取」とは何か。窪田氏は、こう説明する。

「東京大学の本田由紀教授が唱えた概念で、経営者が社員に対し、『夢』や『やりがい』を強く意識させることで労働力を不当に利用するというもの。『働く』ということは、『夢をかなえるため』『自分が成長するため』と経営者から叩き込まれた社員は、自らすすんで時間外労働やサービス残業に身を投じ、低賃金や低待遇であっても不平不満を口にしない。......そんな『やりがい搾取』は佃製作所にビタッと当てはまってしまう」
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