中小企業基盤機構が、年明け早々にリリースした動画「男前無計画経営者」が、話題を呼んでいる。
高級外車で市場に仕入に通う青果店の店主。石原裕次郎を気取り、パープルカラーのスリーピース姿で店先に立って若い主婦にメロンをまるごとサービス。前の晩の深酒で休業することもしばしば......。消費者の目にとまれば、「なに、これ」「全然、男前じゃない」「こんなことって......」と怪訝に思うような内容だ。
逆説的「男前」動画が伝えたいことは......
「男前無計画経営者」は、2019年1月7日の公開。経済産業省所管の独立行政法人、中小企業基盤機構(中小機構)が、時代の変化でさまざまな問題が表面化してきた「融資慣行」を改善するために策定した「経営者保証ガイドライン」の周知と利用促進を目指して制作した。
多くの中小企業にとって、金融機関からの融資は欠かせないものだが、企業が融資を受けるには、古くから慣行として経営者本人が連帯保証するなど「経営者保証」の提供が求められている。
たとえば保証を提供した融資が返済不能となり、保証を履行するとなると経営者は資産を失う可能性があるが、一定の要件を満たすことを条件に救済する余地がある。その「物差し」が「経営者保証ガイドライン」だ。
企業・経営者に求められる要件には、「会社と経営者個人の明確な区分・分離」「財務基盤の強化」「経営の透明性の確保」などで、これらを満たしていれば、新規融資や保証履行後にある程度の資産を残せる場合がある。
「男前無計画経営者」動画は、中小企業の経営者らに、経営者保証ガイドラインの存在を伝えるのが狙い。無軌道な経営ぶりを誇張して描いてみせているが、ガイドラインを活用すれば、融資を受ける際に経営者保証が不要になる可能性があること。ガイドラインを活用するためには、経営改善を図る必要があることを表現した。
つまり、「無茶苦茶な経営者では、せっかくの有利な融資を受けられるチャンスを逃してしまいますよ」というメッセージが込められており、それを強調した「逆説的」な展開が注目の的になっているのだ。
認知度イマイチ、SNSの拡散に期待
中小機構が「経営者保証ガイドライン」をスタートしたのは2014年2月。それから4年を経過した18年1~2月に、中小企業経営者を対象にアンケートを実施。ガイドラインの存在について聞いたところ、「聞いたこと、また見たことがある」と答えたのは47.6%にとどまった。
またガイドラインの適用を受けたことのある経営者に、その効果を聞くと、「経営者保証が解除された」「新たな条件提示とともに経営者保証が解除できると判断された」と答えた人の合計で48.6%に達した。
この結果、「適用」されれば保証が不要となる可能性があるケースが5割に近いことから、認知度の向上を目指して、今回の動画制作の運びとなった。
逆説的な内容にしたのは、中小企業で多い60~70代の経営者らがインターネットの動画を閲覧する機会が少ないと判断。中小企業で働く、国内雇用者数の7割にあたる3360万人(総務省統計局「経済センサス」)と、その家族のSNSなどを通じて広まり、そこから経営者に情報が届くことを期待したからという。