企業がSDGsに取り組む意義(下) SDGsはビジネスチャンス!(大和総研 太田珠美)

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   前回は、SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みがCSR(企業の社会的貢献)につながるということを述べました。では現状、日本企業が取り組んでいるCSR活動はどのようなものが多いのでしょうか。

   CSRに関する報告書などをみると、生み出した利益の一部を社会に還元したり(環境保護や文化事業、地域振興などに寄与するプロジェクト・団体への寄付や、関連イベントへの協賛など)、社員がボランティア活動に参加したりするなど、本業の「プラスα」で行われる活動が多く掲載されています。

  • 持続可能な社会をつくる!
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事業活動を通じた社会課題の解決を

   しかし、SDGsの達成において企業に求められる役割は、こうした「プラスα」の活動にとどまらず、事業活動を通じた社会課題の解決にあります。

   SDGsの達成に貢献し得る、新たなビジネスモデルを築いたり、新しい技術を生み出したり、といったことです。

   たとえば、「目標12:つくる責任 つかう責任」を達成するため、従来リサイクルされていなかった製品を、素材や設計の変更によりリサイクル可能な製品にすることを考えます。

   コストが大幅に上昇するなど、経済合理性を欠くようでは事業として成り立ちませんが、たとえば設計を変える中で部品の数を減らすことができ、コストも削減できるようになるかもしれません。

   また、リサイクルすることで原材料の消費を減らし、将来の資源の枯渇を避けることができれば、事業の持続性は高まるでしょう。

SDGsには12兆ドルのビジネスチャンスがある!?

   ダボス会議で知られる世界経済フォーラムが2016年に設置したBUSINESS & SUSTAINABLE DEVELOPMENT COMMISSIONは、SDGs達成の過程で「Food and Agriculture」「Cities」「Energy and Materials」「Health and Well-Being」の4分野の60市場において、世界全体で約12兆ドル(1ドル=110円とすると1320兆円)の事業機会が生まれると試算しています。(注)

   内訳をみると、「Food and Agriculture」が食品ロス・廃棄の削減や低所得者向け市場の開拓などの14分野で2.3兆ドル、「Cities」がエネルギー効率の高い建物、電気(ハイブリッド)自動車など16分野で3.7兆ドル、「Energy and Materials」が自動車や家電製品、産業機械の資源循環、再生可能エネルギーの拡大など17分野で4.3兆ドル、「Health and Well-Being」が遠隔患者モニタリングや遠隔医療など13分野で1.8兆ドルとなっています。

   企業にとってSDGsの17の目標は、自社の事業を見直し、新たな事業機会をみつけるきっかけになるかもしれません。(大和総研 金融調査部・主任研究員 太田珠美)

注:BUSINESS & SUSTAINABLE DEVELOPMENT COMMISSION 「BETTER BUSINESS BETTER WORLD」

太田 珠美(おおた・たまみ)
大和総研 金融調査部・主任研究員
2003年、大和証券に入社。支店営業や経営企画部を経て2010年に大和総研に転籍。投資戦略部で日本株式市場を担当したのち、資本市場調査部(現・金融調査部)でコーポレート・ファイナンスを担当。
著書に、「証券市場のグランドデザイン -日本の株式市場はどこに向かうのか-」(中央経済社、2012年12月、共著)。東京工業大学大学院非常勤講師(2017・2018年度下期)。
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