「トランプ相場」が変調を来した。そのきっかけもまた、トランプ米大統領が仕掛けた「米国ファースト」であり、中国への貿易戦争だ。
2019年1月3日、米ニューヨーク株式市場でダウ30種平均株価が大幅に値下がり、終値は2万2686ドル22セントだった。前日に業績予想を引き下げたアップルの株価が約10%下落。その背景に、米中の貿易戦争や中国経済の減速が強まったとの見方があるとされる。その余波で、翌4日の東京株式市場は前年末(12月28日)から452円81銭値下りの1万9561円96銭で引け、大発会としての下げ幅は2016年以来3年ぶりの大きさだった。
世界経済が混沌としてきた。
最大の問題は米中の政治的リスク
では、2019年の株式市場はどのようになっていくのだろう?
世界経済がピークを越えたというのは、専門家の間でコンセンサスになっている、基本的には2019年の世界経済は伸び悩む方向だろう。
最大の問題は、状況がさらに悪化してリーマン・ショックのような危機的状況がやってくるのか、それとも景気の低迷は一時的なものにとどまり、徐々に復活してくるのかというところだ。これについて筆者は、後者すなわち景気が軟着陸していく可能性が高いと考えている。
株式市場はバブルとその破裂を繰り返してきたわけだが、欧米の中央銀行はその教訓を肝に銘じてきた。今の株式相場の下げは欧米の中央銀行が金融引締め(金利の上昇)に舵を切ったことに端を発している。
これは景気が過熱する前にバブルを潰すために行ったことであり、今のところうまくいっていると言っていいのではないか。しかし、2019年はそれとは逆に弱含みの相場に対処していくことが中央銀行の重要な任務となるだろう。とりあえず、金利は上げないという選択肢を取る可能性も十分ある。
今の最大の問題は、政治的なリスクだ。なかでも、米国と中国が政治的に混迷していることが世界の不安感を増大させている。当座の相場への影響としては、現在進行形の米中貿易戦争の動向が大きい。これについては90日の交渉が終わる今年3月に、それなりの合意が得られれば、逆に株式相場にはいい影響を与える可能性もある。
とはいえ、中国では習近平国家主席による一極体制が強化されてきており、政局について予測することが非常に難しい。生産の不振、増え続ける債務(借金)、格差の増大などの国内問題に加えて、国際的課題としては貿易以外にも領土、ハイテク、サイバーなどと問題は山積みであり、これらをどうさばいていけるどうかで相場にもさまざまな影響を与える。
(中見出し)株価下落で「逆張り」はありかも......
欧州でも混乱が続くだろう。BREXITの問題は意外にうまく乗り越えられる可能性があるが、イタリアの債務の問題や相次ぐ極右政権の誕生など問題は山積しており、楽観視はできない。
一方、新興国市場についてはもともと変動が激しいマーケットであり、2017年に相場が上がり、2018年には下がったところで、2019年は上がるとみる識者は多い。ただし、リスクも大きいことを忘れてはいけない。
いずれにせよ、今年は2018年秋までのように相場全体が大きく上がっていくという期待は小さい。
世界市場全体からみると、結局は米国株が頼りという構造は変わらないのではないか。2008年からの10年間を見ても、欧州株の指数が軒並み下げた中で、米国の株式指数S&P500は2倍以上に増えた。
米国市場は厚みと広がりがあり、アップルやアマゾンなどのハイテク株が下がっても、インフラやヘルスケアなどの安定したセクターが支える、という構造がある。
日本の株式相場は、企業収益が伸び悩んでいることや、金融緩和も財政投資もやり尽くした感があること、海外でネガティブな動きがあると「株安・円高」に振れやすいことなどを考えると、積極的になりくにくい。
ただし、株価がある程度下がっていった場合は、個別企業をよく見ながら、「逆張り」で買いに入るという選択肢もあると思う。(小田切尚登)