【IEEIだより】福島・双葉町レポート(その1)土地を売れない人々(越智小枝)

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中間貯蔵施設の建設予定区域を見下ろす

   最初に案内されたのは町役場。立派な4階建ての建物は、外から見ても窓ガラス一つ割れずに残っており、7年半も放置されてきたようにはとても見えません。駐車場に放置されたすべてのクルマのタイヤの空気がすっかり抜けていることだけが、長い時間の流れを物語っていました。

   建物の中に入ると、カビと埃のにおいの混じった空気が鼻をつきます。それは予想していたような腐臭とか獣臭さではなく、むしろ生き物の気配のない、乾いて澱んだ匂い、という印象でした。

   ガラス窓には、

「福島第一原発10キロメートル以内区域のため室内待機となります。外出しないでください。」

   という貼り紙。避難指示がでるまでの3月11日から12日の朝までに貼られたものと推定されます。

建設中の減容施設(写真提供:越智小枝氏)
建設中の減容施設(写真提供:越智小枝氏)

   建物の屋上まで階段で上がり、新鮮な空気にホッとしたのも束の間、正面に広がった景色は、赤い土肌と、巨大な工事現場。これが中間貯蔵施設建設予定区域でした。この地域は、現在は減容のための施設が建設中ですが、保管場所にはすでにパイロット(試験的)輸送として、大量のフレコンバッグが搬入されていました。仮置き場から搬入されたバッグはまず「保管場」に貯められ、この中身を減容して運び入れるのが「中間貯蔵施設」になります。窪地を利用した場所には「土壌貯蔵施設」というものも建設中でした。

「あっちのほうに私の家があります。新築だったんですよ」

   とHさんが指さしたのは、その中間貯蔵施設の建設予定区域の中でした。

「知り合いに『お前のところは(中間貯蔵施設の区域に入って)お金もらえるからラッキーだったな』って言われることもあります。でも、家族と住んでいた自分の家ってそういうものではないでしょう」

   とはいうものの、中間貯蔵施設の外では土地を買ってもらえず、また避難指示が解除されれば税金も課されるはず。そこには歴然とした格差があります。

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