リーマン・ショックが2008年に起きてから10年。世界経済はその間に着実に拡大してきた。これほど長い期間に及ぶ経済成長は記録的といえるものだ。株式市場も2018年11月まで持ちこたえた。
これは何といっても、米国の景気のよさに後押しされた面が大きい。トランプ米大統領による減税や財政支出が貢献し、米国の企業収益は好調を持続した。失業率の3.7%は完全雇用とも言える低いレベルである。労働者の賃金も上昇。消費も堅調だった。
2018年、資産価格が上昇したのはアートと高級ワインだけ
ところが、2018年12月に入って、マーケットは大きな変動が起きた。米国をはじめとする世界の株式市場の大半が大きく下がり、株式以外の債券や商品など大抵の資産価格も下落した。
米ウォールストリートジャーナル紙によると、2018年にそれなりに資産価格が上昇したのはアート(美術品)と高級ワインだけだったという。
どうしてこんなに下がったのか――。12月に入って世界経済が突然悪くなったわけでは、もちろんない。投資家のセンチメントが悪化してきたということだ。
最大の要因は米国である。金融緩和が終わり、金利が上昇してきた。今は米短期国債の利回りが年2.4%程度ある。単に国債を持っているだけで、それだけリターンが得られるようになれば、相対的に株式の魅力が失われるのも当然といえる。
しかも、これはS&P平均指数の平均配当利回りを上回るリターンなのだ。
二つ目は、トランプ米大統領の予測不能な行動である。自国第一主義を唱えるトランプ大統領は、世界中の国々と色んな問題を起こしている。特に中国との間で繰り広げられている「米中貿易戦争」の影響は大きい。これらの展開によって世界情勢の不確定性が増した。
米国の景気は決して悪くないのに、トランプ大統領が自ら株価下落の要因をつくってしまった。
中国経済は停滞ぎみ 世界経済はピークを越えた
その一方で、中国経済が停滞ぎみになってきたことは重要である。
中国内の生産や消費が伸び悩んでいるところに、米国との貿易戦争の影響が加わり、大変厳しい状況だ。中国とて、米国を中心とする世界との貿易に大きく依存している。世界の影響を強く受けるし、逆に中国の経済が世界に大きく影響するという双方向の関係にある。
欧州は米国以上に苦しい。欧州経済が米中を中心とする世界の不安定な情勢に翻弄されている面もあるが、一方でイタリアの経済状況と、英国のEU離脱問題(BREXIT)の二つは、欧州内部で抱える問題の根深さを象徴している。
新興国市場は、2017年は好調だったが、2018年はトルコとアルゼンチンなど混乱が続いた。新大統領誕生に沸くブラジルを除き、大半の新興国で株価が大きく下落した。
株式市場以外では、商品が下がってきた。原油は中東情勢の混乱で一時上昇する気配を見せたが、結局は大きく下がった。需要が停滞したためだ。一方で銅、アルミニウム、ニッケル、亜鉛といった金属も大きく下がった。(小田切尚登)