前回、SDGs(持続可能な開発目標)の達成には公的部門だけでなく、民間部門の力が必要であることにふれました。
民間部門の中でも、特に企業の事業活動にともなう投資、そこから生み出されるイノベーションは、経済成長や雇用創出を生み出すことなど、SDGsの達成に大きく貢献するものと期待されています。
CSRの取り組みは企業の持続的な成長につながる
すでに多くの企業がCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)に取り組んでおり、SDGsもこれと同じではないか? と思う方も多いかもしれません。
CSRとは、企業が消費者や従業員、取引先、地域社会、株主や金融機関など、さまざまなステークホルダーからの信頼を得るための活動を指します。
CSRに取り組むことは、企業の持続的な成長につながり、社会の持続性の向上に貢献するものとされています。SDGsの目的は持続可能な社会をつくることですから、最終的な目的はCSRと同じと言えます。
CSRとSDGsの違いは、CSRは企業がステークホルダーからの信頼を得るためにはどうしたらよいか、自ら考えて行動に移すものであるのに対して、SDGsは解決しなければならない社会的課題(17の目標)が、すでに提示されていることでしょう。
自社の事業がSDGsの達成にどのように貢献できるかを考え、行動に移すことになります。
SDGsへの取り組みはCSRにつながる
その一方、SDGsへの取り組みは、結果的にステークホルダーからの信頼を得ることにもなり、CSRにつながると考えられます。
たとえば、
「目標13:気候変動に具体的な対策を」
「目標14:海の豊かさを守ろう」
「目標15:陸の豊かさも守ろう」
の観点を意識し、環境に配慮する企業は、周辺に住む地域住民から信頼されるでしょう。
また、
「目標5:ジェンダー平等を実現しよう」
「目標8:働きがいも 経済成長も」
「目標10:人や国の不平等をなくそう」
を意識し、従業員の処遇を性別や人種などで差別しない企業は、従業員から信頼されるでしょう。
言い換えれば、SDGsの目標から遠ざかるような行動は、ステークホルダーからの信頼を失うリスクがあるということです。SDGsの採択を契機に、世界的に社会的課題の解決を目指す機運が高まっています。SDGsの目標に反する行動を取る企業は、取引先のサプライチェーンから外されるリスクもあります。
SDGsは、CSRに取り組む際の指針になるものと言えるでしょう。(大和総研 金融調査部・主任研究員 太田珠美)