【2019年を展望する!】その2 米国が風邪ひくと...... ユーロ、豪ドルを検証する(志摩力男)

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   2019年の米国経済はどうなるのか――。

   2018年の好調は維持できません。過大にかけたレバレッジが解消される「ディレバレッジ」の季節に入ります。要は、ポジション調整ということでしょう。

   米国の住宅は、一部の地域であまりにも値段が上がり過ぎました。調整を余儀なくされるでしょう。GDP(国内総生産)統計を見ると、在庫の積み上がりも確認できます。在庫の影響を差し引くと、米国経済の実質的な成長は結構小さめです。米中対立から、半導体関係も徐々に不況に入っています。

  • 2019年 ユーロ、豪ドルのゆくえは?
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ブレクジットに揺れる英ポンド もしEU残留が決まったら?

   2018年ほどのよい環境でも、ドルは上がりませんでした。そうなると、2019年のリスクは当然下方向(円高方向)となります。108円前後にサポートライン(支持線。為替レートが過去に何度か、その水準で下げ止まった価格帯)が来ていますが、そこを割り込むと、1ドル105円から100円というコースが見えてきます。

   レンジとしては、1ドル100~115円と言ったレンジになるのでしょうか。年末から年始にかけてはドル安と考えます。

   ユーロに関しては、2018年当初は強気の見方をしていました。対ドルで1.30ユーロもあり得ると。その背景にあったのは、欧州経済の復活です。2017年の成長率は2.5%と、米国(2.2%)を上回りました。製造業PMI(製造業購買担当者指数)は2017年12月には60.6まで上昇しました。

   ところが、そこから欧州は「謎」の景気後退を向かえます。PMI(景気指標の一つ。購買担当者指数)が予想外に低下するので、2月ぐらいにはユーロの強気見通しを放棄し、1.15以下もあり得ると見通しを変更しました。結局、11月の製造業PMIは51.4と、10近く下げています。おそらく、背景には中国経済の減速があるのでしょう。

   現在、欧州経済はよくありません。フランスのPMIは50を割ってきました。欧州全体でも50を割りそうに見えます。ドラギ総裁は量的緩和政策を終了しましたが、利上げはまだずいぶん先の話になるでしょう。むしろ、量的緩和政策を再開せざるを得なくなる可能性まであります。ただ、米国も徐々に景気減速するので、そのバランスでしょうか。対ドルではニュートラルです。最初はユーロ安、1.05方向かもしれませんが、ユーロドルはどこかで反発するでしょう。ドルはBIS実質実効為替レートによると過去最高値です。米経済の軟化が続くと、どこかでドル下落、ユーロ反発がありそうです。

どう決着!? 英国のEU離脱問題
どう決着!? 英国のEU離脱問題

   英国はブレクジットがあるので、その動向次第です。メイ政権に問題解決できるようには見えないので、何らかの形で、総選挙もしくは国民投票の再実施に至る可能性が高まっているでしょう。「合意なき離脱」の場合、英国中央銀行によると1.00割れとの見方です。しかし、もし国民投票などの結果で残留となると、これまでのブレクジット懸念による下げが修正されるので、注意が必要です。

   残留が決まると1.50方向でしょうが、国民投票をするというアナウスが流れるだけで、市場は残留を織り込みに行こうとするでしょう。残留決定で1.50だと思います。国民投票などのアナウンスがあると、数%上昇する可能性があります。

豪ドルを左右する「カギ」は中国経済

   もう一つ、注意しないといけない展開もあります。仮に総選挙などになった場合、労働党が勝利する可能性があります。現在の労働党は、かつてのトニー・ブレアがいた頃のような「ニュー・レーバー」ではありません。コテコテの社会主義者、ジェレミー・コービン氏が党首です。彼が首相の座につくことをビジネス界は望んでいません。規制強化されることが目に見えているからで、金融都市ロンドンは死ぬことになります。

   その場合も、ポンドドルは落ちます。仮にEU残留が決まったとしても、労働党政権の元ではポンドドルは落ちると考えているエコノミストは多いです。

   次に豪ドルです。豪ドルは2つの要因で左右されます。

   まずは中国経済がどうなるかです。米中対立を前提にすると、中国経済は今後困難な状況となるので、必然的に豪ドルは売られることになります。

   ただ、現下の経済指標などは結構強めです。その意味では、中国が大変なことにならなければ、利上げが見えてくるので、上昇シナリオもありえます。

   しかし、米中対立から中国経済が軟化するとなると、オーストラリアが被る影響は甚大です。商品市況の低迷、資源輸出の減少などから、景気は減速し、それが不動産価格の下落に繋がると、一部で言われている「Doomsday Scenario」となります。不動産市況の低迷で、4大銀行が多額の不良債権を抱えて、景気回復に相当時間がかかることになります。

   オーストラリアは20年以上、不動産不況を知りません。ずっと上昇トレンドが続いています。移民による購入もあるでしょうが、中国からのマネーが不動産を支えています。しかし、中国経済が思わしくない方向になるということであれば、シドニーなどの不動産への換金売りも起こる可能性があります。

   そうなると、豪ドルはただただ下落トレンド入ということになり、ターゲット的にはリーマン・ショック時の1米ドル0.55豪ドル程度になります。

   トルコリラは、対米関係改善で2018年8月の安値から大きくリバウンドしました。しかし、1トルコリラ22円は十分戻したレベルです。17~22円程度のレンジ観でしょうか。2018年の年初は30円台だったので、そこに戻ると考えている人もいるでしょうが、それは望み過ぎでしょう。

   高いインフレ率があった影響で、均衡点も大きく下がっています。

   メキシコは新しい大統領とビジネス界が対立しています。しかし、中央銀行が適切に対応するので、深い押し目、たとえば1メキシコペソ5円前後などは買い場となりそうです。(志摩力男)

(おわり)

志摩力男(しま・りきお)
トレーダー
慶応大学経済学部卒。ゴールドマン・サックス、ドイツ証券など大手金融機関でプロップトレーダー、その後香港でマクロヘッジファンドマネジャー。独立後も、世界各地の有力トレーダーと交流し、現役トレーダーとして活躍中。
最近はトレーディング以外にも、メルマガやセミナー、講演会などで個人投資家をサポートする活動を開始。週刊東洋経済やマネーポストなど、ビジネス・マネー関連メディアにも寄稿する。
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