豪ドルを左右する「カギ」は中国経済
もう一つ、注意しないといけない展開もあります。仮に総選挙などになった場合、労働党が勝利する可能性があります。現在の労働党は、かつてのトニー・ブレアがいた頃のような「ニュー・レーバー」ではありません。コテコテの社会主義者、ジェレミー・コービン氏が党首です。彼が首相の座につくことをビジネス界は望んでいません。規制強化されることが目に見えているからで、金融都市ロンドンは死ぬことになります。
その場合も、ポンドドルは落ちます。仮にEU残留が決まったとしても、労働党政権の元ではポンドドルは落ちると考えているエコノミストは多いです。
次に豪ドルです。豪ドルは2つの要因で左右されます。
まずは中国経済がどうなるかです。米中対立を前提にすると、中国経済は今後困難な状況となるので、必然的に豪ドルは売られることになります。
ただ、現下の経済指標などは結構強めです。その意味では、中国が大変なことにならなければ、利上げが見えてくるので、上昇シナリオもありえます。
しかし、米中対立から中国経済が軟化するとなると、オーストラリアが被る影響は甚大です。商品市況の低迷、資源輸出の減少などから、景気は減速し、それが不動産価格の下落に繋がると、一部で言われている「Doomsday Scenario」となります。不動産市況の低迷で、4大銀行が多額の不良債権を抱えて、景気回復に相当時間がかかることになります。
オーストラリアは20年以上、不動産不況を知りません。ずっと上昇トレンドが続いています。移民による購入もあるでしょうが、中国からのマネーが不動産を支えています。しかし、中国経済が思わしくない方向になるということであれば、シドニーなどの不動産への換金売りも起こる可能性があります。
そうなると、豪ドルはただただ下落トレンド入ということになり、ターゲット的にはリーマン・ショック時の1米ドル0.55豪ドル程度になります。
トルコリラは、対米関係改善で2018年8月の安値から大きくリバウンドしました。しかし、1トルコリラ22円は十分戻したレベルです。17~22円程度のレンジ観でしょうか。2018年の年初は30円台だったので、そこに戻ると考えている人もいるでしょうが、それは望み過ぎでしょう。
高いインフレ率があった影響で、均衡点も大きく下がっています。
メキシコは新しい大統領とビジネス界が対立しています。しかし、中央銀行が適切に対応するので、深い押し目、たとえば1メキシコペソ5円前後などは買い場となりそうです。(志摩力男)
(おわり)