米国経済、減税効果はどこいった?
ところが、実際のドル円レートにはその後、どのようなことが起こったでしょうか。年明けすぐ、日銀が超長期債購入減額というニュースが飛び込んできました。2017年11月に黒田東彦総裁が「リバーサルレート」に言及したこともあり、日銀の政策転換!? との思惑から円高が進みました。
また、「中国当局者、米国債購入の減額、もしくは中断を推奨」というニュースも流れました。中国は貿易戦争を警戒し一歩先に手を打ってきたのかなと思いました。米国債は下落、米長期金利は2.4%前後から2.9%前後へと急騰しました。
しかし、そうした米国の金利上昇のなか、ドル円は下落していったのです。
米長期金利の上昇は、リスクパリティファンド(各金融商品の変動率などから計算し、リスクの低いものに多額の投資、高いものに少額投資するファンド)、そしてVIX(恐怖指数)先物をショートしているファンドからのストップロスも誘発し、米国株が急落しました。
またその頃、ダボス会議に参加するムニューシン財務長官が「ドル安は貿易赤字の改善に役立つ」などと、ドルに対して口先介入的な動きもありました。ドル円は想定とは裏腹に、年初円高が進み、1ドル104.56円を試しました。
とはいえ、2018年の米国経済には強みがありました。減税効果によって、猛烈な経済成長をすることが確実視されていました。加えて、約100兆円という巨額の自社株買いが出てくることも推察されていました。
米国株は下げ止まり、その後10月の高値に向けて順調に上昇しました。ドル円相場のほうも安定。巨額のM&Aなどに支えられ、1ドル104.56円を底値に115円近くまで値を戻しました。私も、何度かこのままドル円は上昇軌道に乗るのではないかと思いました。「円安のセカンドステージ」(J-CASTニュース会社ウォッチ 2018年10月4日付)リンク:https://www.j-cast.com/kaisha/2018/10/04340369.htmlという内容の記事も書きました。
ところが、そこでペンス副大統領の演説がありました。その後の展開は、ご存知の通りです。(志摩力男)
(つづく)