この原稿を執筆中の今、米国株は崩れ、日本株は2万円の大台を割り込み急落しています。この展開を、多くの方々が予想していなかったのではないでしょうか――。
相場下落の理由はいろいろあると思いますが、トランプ米大統領がFRB(米連邦準備制度理事会)の政策を気に入らず、パウエルFRB議長解任を検討しているとのニュースもその理由の一つでしょう。中央銀行の独立を侵害するとどうなるかは、2018年8月にトルコリラがどうなったのかを見れば、一目瞭然です。
吹っ飛んだ米中貿易戦争の終結への期待感
しかし、今回の相場の下げの本質は、トランプ米大統領とパウエルFRB議長の確執というところにあるのではないと思います。
相場がピークを打ったのは、2018年10月初め。その時、何があったのか?
一つはワシントン・ポスト記者、カショギ氏が暗殺された事件です。一人のジャーナリストの死以上のインパクトがありました。サウジアラビアは国際的に窮地に陥り、原油増産に応じたのかどうかわかりませんが、その後、原油価格は暴落して現在40ドル台です。 そしてもう一つは、ペンス副大統領がハドソン研究所で行った「政権の対中政策」演説です。あの演説で米国が何を考えているのか、明確になりました。
状況次第では、早晩、米中貿易戦争は終わるとの期待もありましたが、すべて吹き飛びました。
あの演説で示されたのは、米国の大きな転換です。リーマン・ショック以降、米国は経済の危機対応に追われていましたが、それもようやく終わり、政治の季節になったのです。米国の中枢は、経済的に多少不利益があったとしても、世界の政治地図を塗り替える方向にシフトしたのだと思います。
つまり、「リスクオン」ではなく「リスクオフ」の世界にこれから入ります。
10月以降の株価の軟調は、そうしたことを理解したファンドマネージャー、投資家からの戻り売りで頭が重くなっていきました。ここ最近の急落は、ペンス演説とは無縁に思われますが、大きな大きなトレンドの転換を前提に考えると、納得できる動きだと思います。