【2019年を展望する!】その1 「ペンス演説」が世界を変えた(志摩力男)

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

   この原稿を執筆中の今、米国株は崩れ、日本株は2万円の大台を割り込み急落しています。この展開を、多くの方々が予想していなかったのではないでしょうか――。

   相場下落の理由はいろいろあると思いますが、トランプ米大統領がFRB(米連邦準備制度理事会)の政策を気に入らず、パウエルFRB議長解任を検討しているとのニュースもその理由の一つでしょう。中央銀行の独立を侵害するとどうなるかは、2018年8月にトルコリラがどうなったのかを見れば、一目瞭然です。

  • 2019年、米国経済はどうなる?
    2019年、米国経済はどうなる?
  • 2019年、米国経済はどうなる?

吹っ飛んだ米中貿易戦争の終結への期待感

   しかし、今回の相場の下げの本質は、トランプ米大統領とパウエルFRB議長の確執というところにあるのではないと思います。

   相場がピークを打ったのは、2018年10月初め。その時、何があったのか? 

   一つはワシントン・ポスト記者、カショギ氏が暗殺された事件です。一人のジャーナリストの死以上のインパクトがありました。サウジアラビアは国際的に窮地に陥り、原油増産に応じたのかどうかわかりませんが、その後、原油価格は暴落して現在40ドル台です。 そしてもう一つは、ペンス副大統領がハドソン研究所で行った「政権の対中政策」演説です。あの演説で米国が何を考えているのか、明確になりました。

   状況次第では、早晩、米中貿易戦争は終わるとの期待もありましたが、すべて吹き飛びました。

   あの演説で示されたのは、米国の大きな転換です。リーマン・ショック以降、米国は経済の危機対応に追われていましたが、それもようやく終わり、政治の季節になったのです。米国の中枢は、経済的に多少不利益があったとしても、世界の政治地図を塗り替える方向にシフトしたのだと思います。

   つまり、「リスクオン」ではなく「リスクオフ」の世界にこれから入ります。

   10月以降の株価の軟調は、そうしたことを理解したファンドマネージャー、投資家からの戻り売りで頭が重くなっていきました。ここ最近の急落は、ペンス演説とは無縁に思われますが、大きな大きなトレンドの転換を前提に考えると、納得できる動きだと思います。

志摩力男(しま・りきお)
トレーダー
慶応大学経済学部卒。ゴールドマン・サックス、ドイツ証券など大手金融機関でプロップトレーダー、その後香港でマクロヘッジファンドマネジャー。独立後も、世界各地の有力トレーダーと交流し、現役トレーダーとして活躍中。
最近はトレーディング以外にも、メルマガやセミナー、講演会などで個人投資家をサポートする活動を開始。週刊東洋経済やマネーポストなど、ビジネス・マネー関連メディアにも寄稿する。
公式サイトはこちら
姉妹サイト