喜びながらも首をかしげた広報担当者は...
それにしても、「消費者金融、事業者金融」の有給消化率がトップなのはなぜか。貸金業界の自主規制機関である「日本貸金業協会」のホームページを見ると、「協会員の法令遵守の支援」に大きなスペースを割いており、社内規則の作成や研修支援に熱心に取り組んでいることがわかる。
業界をあげて労働関係の法律をしっかり守らせ、従業員の福利厚生の向上を図っているからの効果だろうか。協会の広報担当者に話を聞くと、意外な答えが返ってきた。
――この有給消化率トップの結果をどう思いますか?
協会の広報担当者「正直に言って、加入している全部の業者がアンケートの調査結果どおりに労務状態がいいのかどうかわかりません。協会に加入している貸金業者は約1100社ですが、うち8割が法人で、残り2割の約220が個人事業です。業者の規模はさまざまですから、個人事業のところまで一概に有給取得率がいいといえるかどうか......」
――しかし、協会として協会員の法令順守に努めているではありませんか?
協会の広報担当者「それはあくまで、貸金業法に基づく貸付業務は、ちゃんと法令どおりに行なおうという指導であって、個々の協会員の労務管理や福利厚生面には一切タッチしておりません。たとえば協会員のテレビCMや新聞、雑誌広告も事前に審査するなど、健全化に努めてきました。最近では、行政処分を受ける会社もなくなってきました」
――クチコミでは、「暦どおりに休める」「上司が有給取得を勧める」とあります。土日祝日はしっかり休める業務形態が有給消化率の向上につながっているのでは?
協会の広報担当者「さあ、それはどうでしょうか。最近はネットで24時間貸付を行なうところが多いですから、システム関係の従業員は暦どおりにはいかないと思います」
――では、なぜ有給消化率がトップになったと考えていますか?
協会の広報担当者「マスコミに取り上げられる場合は批判的な捉え方が多かったですから、今回のように好意的な形で取り上げられるのは、内心喜ばしいです。おそらく貸付業務をちゃんと法令どおりに行なうことを徹底させてきたことが、労務や福利厚生面でも法令どおりにやろうよという動きになったのではないでしょうか」
どうもよくわからないが、業界のイメージを上げるために健全化に努めた結果、労務管理面でも健全化が進んだのかもしれないという、まことに謙虚な回答だった。(福田和郎)