見えてきた、米金融政策の転換点 年末年始の円高ドル安に注意(志摩力男)

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金融緩和に向け、最大の「障害」はトランプ大統領

   トランプ大統領は2018年8月21日、ロイターとのインタビューでFRBの利上げを「気に入らない(not thrilled」と痛烈に批判。「私はFRBからいくらかの助け(some help)を受けるべきだ。他の国々は(金融緩和の)恩恵を受けている」と、事実上の金融緩和を要請しました。

   パウエル議長のタカ派的発言は、この頃から加速しました。しかし、トランプ発言のほとぼりが冷め、人々が話題にしなくなったときに、議長は「just below」と市場に歩み寄る発言をしたのです。トランプ大統領のFRB批判がなければ、もっと早くパウエル議長も金融緩和の方向へ発言をシフトできたのかもしれません。

   要するに、金融緩和の最大の障害はトランプ大統領自身と言えるのです。大統領が静かになるまで、FRBは金融緩和方向にシフトできません。また不幸なことに、トランプ大統領は自身が最大の障害だということを理解できないでしょう。

   今年は同様のことがトルコでも起こりました。エルドアン大統領がトルコ中央銀行に金融緩和しろと、何回となく迫りました。その結果どうなったか。それは8月のトルコリラ暴落です。

   就任からこれまで、トランプ大統領はハチャメチャに見えながらも、米政権はなんとかうまく回っていました。周囲のサポートが厚かったからでしょう。しかし、マティス国防長官も辞任しました。ケリー大統領首席補佐官の後任人事はかなり困難を伴いました。大統領を手厚くサポートし、米国が間違った方向に行かないようにサポートしてきた人たちがどんどん離れていっています。

   また、今回のパウエル議長の頑な表情を見ると、本心で語っているのではないように感じました。トランプ大統領の発言の影響さえなくなれば、米国はもっと本格的に金融政策の転換に進みそうな感じがします。少なくとも、利上げは今のところあと2回、遅かれ早かれ、米国の金融政策の転換点はやってきます。

   そうであるならば、史上最高値近辺(BIS算出実質実効レートによる)にあるドルが反転する可能性も「時間の問題」でしょう。市場は未来を織り込んでいきます。ドルの反転が近いならば、以外にもこの年末年始の薄い時期こそドル急落に注意でしょう。(志摩力男)

志摩力男(しま・りきお)
トレーダー
慶応大学経済学部卒。ゴールドマン・サックス、ドイツ証券など大手金融機関でプロップトレーダー、その後香港でマクロヘッジファンドマネジャー。独立後も、世界各地の有力トレーダーと交流し、現役トレーダーとして活躍中。
最近はトレーディング以外にも、メルマガやセミナー、講演会などで個人投資家をサポートする活動を開始。週刊東洋経済やマネーポストなど、ビジネス・マネー関連メディアにも寄稿する。
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