ノルマが「ブラック」に陥る境界線 その商品「悪徳」「暴利」じゃないですよね(大関暁夫)

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こちらが売りたいものは利幅が大きい

   以前、OA機器販売代理店H社の社長から、こんなお悩みを聞きました。

「うちを辞めて、うちよりも大手の同業他社に転職した社員が、うちのことを『あの会社はブラックだ』と、ふれ回っているらしい。その理由が『常に大きなノルマを負わされて社長に尻を叩かれるから、どうしても騙しに近いような売り方をすることになる』というもの。しかし、私は騙して売れなどと指示したこともないし、それはそういう売り方になる本人の問題であってうちはブラックじゃないと思うのだが、どうだろうか」

   この時も、私が社長に申し上げたのは、「普通じゃなかなか売れないもの(悪徳なもの)、常識外に利益率の高いもの(暴利なもの)を売ることにノルマを課していませんね」という確認でした。

   社長はしばらく考えて、「少しだけだが、販売目標を課す商品の見直しは必要かもしれないな」と言いつつ、次のような気づきを得たようでした。

「確かに普通じゃなかなか売れないものは、ニーズが薄いからに相違ない。それでもその商品にノルマを課すのは、こちらがぜひ売りたいと思うほど利幅が大きいからであって、それは顧客ニーズの薄いものを売りつけて大きく儲けさせてもらう、という売り方になってしまう恐れがあります。さらに行き過ぎてしまえば、ブラックと言われてもそれは否定できなくなるでしょうね。社員が目標に押されて誤った売り方をしかねないものには、目標を貼ってはいけないということですね。今一度、自戒の念を込めて見直します」

   繰り返しになりますが、ブラック化の最大の根源は「普通じゃなかなか売れないもの(悪徳なもの)、常識外に利益率の高いもの(暴利なもの)を売ることにノルマを課すこと」です。

   1000円のスプレー缶を1万円で販売することにノルマを課していた札幌の不動産仲介業者の一件で、ブラック関連の忘れてはいけないポイントを思い出させてもらいました。自社のノルマもその観点から、今一度点検してみるのがよろしいかと思います。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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