手元のお金を増やすにあたって、おそらく多くの人が一番気になるのは損することや、どんなリスクが潜んでいるのか、ということではないだろうか。
クルマの運転や料理のように、毎日やっているうちに慣れてきて、起こりうる最悪の事態が予測できるようになり、ある程度は避けられるようになるのだろうか。
世界中で顧客満足度(Customer Satisfaction=CS)を調査しているJ. D. Powerでは2011年から、資産を運用している人を対象に、「資産運用顧客満足度調査」を実施している。
今回はこの調査から、資産運用をはじめて間もない初心者とベテランとでは、投資に向かう姿勢のどこが違うのか、ベテランになるにつれて、気持ちや行動にどのような変化が起こってくるのか、を紐解いてみたい。
投資のベテランは「マメで熱い人」
「長年投資をしている人」というと、どんなイメージをもつだろう――。もともとお金があるから、ちょっとくらい損もなんのその、プロに運用を任せて左うちわ...... そんな感じかもしれない。
じつは長く資産を運用している人は、そんなイメージとはまったくかけ離れているようだ。下図を見てほしい。
これをみると、投資の経験年数が長いほど「運用にかかる手間が惜しい」と考える人の割合が低下していることがわかる。また、「プロのアドバイスを踏まえて投資判断」と考える人の割合もベテランほど低下する。
つまりベテランほど、最新の市況や新商品のチェック、プロが提供する情報収集などをめんどくさがらずにマメにやっているということだ。
そうしたマメさを武器に、自分の手と頭と情報網を使って知識を増やし、リテラシーを高める努力の結果、自分で投資の判断ができるようになるということかもしれない。
また、おもしろいのは、「自分が投資に熱心だ」という自覚もベテランほど高くなるという点だ。ベテランは、人任せにせず、勉強熱心。そしてそれを自覚しているということだろう。
どうやら、資産運用をはじめて続けられる人というのは、「マメで熱い人」ということらしい。
ベテランは金融機関との付き合い方がうまい!
実際に資産運用を始めたら銀行や証券会社などの金融機関とどう付き合っていけばいいのだろうか。もし、セールス熱心で押しの強い金融機関の担当者がやってきたら、どうしようかと考える人も多いかもしれない。じつは金融機関との付き合い方にも、初心者とベテランの違いがみえた。
下図は、資産を運用している人が、金融機関の担当者にどんな相談をしているのかを見たものである。
これをみると、初心者が担当者に資産運用そのものについて漠然と質問や相談をしているのに対して、ベテランはまず自分の保有資産の運用状況を確認することが大前提と考えていることがわかる。
そのうえで、新商品や市況の確認、セミナーへの申し込みなども、ベテランほど熱心で積極的な様子がうかがえる。
さらに、ベテランほど「自分の担当者が自分好みの商品、資産保有状況、リスク許容度などを理解してくれている」と感じていることもわかっている。どうやら、初心者とベテランの大きな違いは金融機関の使い方にもあるといえそうだ。
金融商品の好みやリスク許容度は投資経験に関係ない!
こう話すと、「ベテランには長年懇意にしている金融機関担当者にがっちり張り付いて、よい人間関係ができているから、いろいろと便宜を図ってもらえるのでは?」と思うかもしれない。
ところが、どうやら意外にもそうでもないようだ。下図を見ると、投資経験が5年、10年、15年と長くなっても、現在の担当者とのお付き合い期間は2~3年程度が最も多いことがわかる。また、投資経験15年のベテランであっても、現在の担当者と5年お付き合いをしている人は1割程度だ。
つまり、ベテランは、金融機関の担当者が異動になって変わったとしても、新たな担当者に自分の投資の好みをうまく伝え、上手にお付き合いしているということかもしれない。
最後にもう一つ興味深いデータを紹介しよう。投資経験が長くなれば、リスクに対する恐怖心が下がって、ハイリスク・ハイリターン型の金融商品を好むようになるのか、という点だ。
元本保証型とリターン追求型の商品のそれぞれ対する好みを聞くと、おもしろいことに、投資経験年数の長さによらず、ほぼ同じ傾向だったことがわかる。
つまり、投資経験を積んでもリスク許容度や金融商品の好みは変わらないし、変える必要のない。リスクへの恐怖心は、「人の価値観」によるものということだ。
なんだか少し安心する結果ではないだろうか。