「ゾンビ企業」の復活の陰にJIC 官民ファンドのあり方を問う
JICはINCJ(産業革新機構)の改組により誕生しているが、INCJはJICの完全子会社となった。ふつうであれば、INCJの子会社としてJICが創設されるものだと思うが、なぜ、こんな形の改組を行ったのかに疑問が残る。
この背景には、ゾンビ企業の救済として批判を集めていたINCJへの批判をかわす狙いがあったとみられる。そのうえ、「JICは官民ファンドの再構築を行うためのもの」(政府関係者)というように、海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)も傘下に置く計画だった。クールジャパン機構は日本アニメの海外配信事業の中止などで大幅な赤字を計上している。
こうした政府の狙いに対して、田中社長は9月25日の記者会見で、「収益力が低いジリ貧の企業、ゾンビ企業の延命はしない」と発言している。つまり、根本的に官民ファンドの役割についての考え方が、政府と田中社長とでは違っていたことは明白だ。
2009年7月にINCJは誕生した。設置期間は15年という「時限措置」が取られ、2025年には解散する予定だったが、2017年に設置期間が9年延長され、2034年までとなった。INCJは、経産省の主導により、4期連続で最終赤字を計上するジャパンディスプレイの再建などに取り組んでいる。INCJの設置期間延長には、経産省の意思が働いている。INCJからJICへの変貌は、看板の掛け替えによるINCJの延命という意味が大きい。
INCJは、シャープ再建や東芝の半導体事業の買収にも名乗りをあげるなど、2016年度末までの累計 114件の投資を行っているが、その多くは経営不振に陥った企業で、これが「ゾンビ企業の延命」と批判されるゆえんだ。