株式投資へのアプローチは大きく分けて二つあり、ほとんどの投資家がファンダメンタルズ分析、またはテクニカル分析に基づいて売買を判断している。
テクニカル分析として知られるのは、MA(移動平均線=株価などの平均値を、過去の推移から現状をとらえて折れ線グラフで示したもの)やRSI(相対力指数=一定の期間で値上がり、値下がりの傾向がどれぐらい強かったかを曲線で示したもの)といった、テクニカル指標を用いた売買ルールだ。
しかし、そんなテクニカル指標を用いた分析手法だけがテクニカル分析のすべてではない。昔ながらのローソク足チャートを使って、チャートの形状から将来の値動きを判断する手法も存在する。こうした分析手法を、「プライス・アクション」と呼ぶ。
ローソク足は世界中で使われる日本初のチャート
テクニカル指標の多くは、その性質上、「遅行指標」(景気や価格の流れなどに、遅れて動く傾向のある指標)であることが多い。
「二本の移動平均線のゴールデンクロスで買い、デッドクロスで売り」という、よく知られている売買ルールがあるが、買うタイミングが遅すぎ、売るタイミングも遅すぎとなってしまうといった問題があるのは、移動平均線が遅行指標であるからというのが理由の一つとされる。
しかし、「プライス・アクション」は、直近を含む一本ずつのローソク足を分析の対象とするため、常に現在の値動きを追うことができる。
ローソク足チャートとは、江戸時代に出羽国の本間宗久が、大阪・堂島の米相場の値動きを時系列に沿って図表的に分析するために考案した手法。その使いやすさから、現代は日本に限らず世界中の投資家に使われている。
ある一定の期間(たとえば、2018年12月18日の9時から9時30分)を定めて、最初の値段(この場合、9時)を「始値」、最も高い値段を「高値」、最も安い値段を「安値」、最後の値段を「終値」と呼ぶ。
ローソク足チャートにはこれらの4つの情報が必ず含まれているため、バーチャートやラインチャートといった他のチャートにはない強みがある。たとえば、ラインチャートは終値だけを結んだチャートなので、高値や安値といった情報を知ることはできない。
「ピンバー」からわかること
もっとも、ひと口にローソク足チャートを分析するといっても、一本のローソク足を単独で分析することもあれば、ある程度のまとまった本数からパターンを見つけ出すものもある。
単独で分析する場合に強力なものを挙げると、ピンバーがその好例だ。参考画像のピンバーは、左の下ヒゲが長いピンバーが相場に上昇の勢いが強いことを示していて、右の上ヒゲの長いピンバーが相場に下落の勢いが強いことを示している。
ピンバーとは、ローソク足の始値と終値の差が小さく(ローソク足の太い部分で、「実体」と呼ぶ)、ヒゲと呼ばれる、ローソク足の細長い部分が長いローソク足を指す。このようなローソク足が出現した場合、ヒゲが出た方向とは逆方向、つまり、下ヒゲなら上昇、上ヒゲなら下落の圧力が強まっていることを示唆している。
プライス・アクションの良書としては、外国為替証拠金取引(FX)のデイトレーダーであるボブ・ボルマン氏の著作「5分足スキャルピングトレード」(パンローリング刊)などがある。
ある程度のまとまった本数からパターンを認識する方法としては、「ボックス」と呼ばれるものを見つけるのがその一例だ。
A社の株価は上昇傾向にあったが、何度も1000円付近の水準まで上昇しては、跳ね返されるように売られて下落するということを繰り返しているようなことがある。このとき、1000円の水準を超えてくるようなら、そこから一気に上昇する可能性が高まる。
なぜなら、「ここからもっと上がるだろう」と考えた順張りの投資家による新規の買い注文と、「1000円を超えることはないだろう」と思って空売りしていた逆張りの投資家の損切りによる買い戻し注文とが、ダブルの圧力となって相場を押し上げるからだ。
ボックス型のパターンを見抜き、株式市場でひと財産を築いたことで知られる投資家としてニコラス・ダーバス氏がいる。「私は株で200万ドル儲けた」(パンローリング刊)に、彼の株式市場に参加した少々奇特なきっかけや、初心者にありがちな失敗の数々、そして当時としては巨額の200万ドルを稼ぐまでの実際の売買の記録が記されている。(ブラックスワン)