残業対策は「外科手術」と「漢方」の両輪で
相当に根深い残業文化だが、職種別にみると傾向が微妙に異なってくる=図表4、5参照。ホワイトカラーは優秀さに基づく仕事の振り分けが行なわれる「集中」が多くみられる。システムエンジニアやプログラマーのようなIT系技術職や幼稚園教諭・保育士には、帰りにくい雰囲気の「感染」が、また、ブルーカラーは60時間以上の残業による「麻痺」が多い。そして、残業の武勇伝を自慢する上司による「遺伝」は、企画・クリエイティブ系の職種に多いといった具合だ。
このように職種によっても残業が起こるメカニズムに濃淡が見られるため、対策は難しい。いったいどうすれば残業文化をなくすことができるのか。小林さんはこうアドバイスする。
「企業が行っている残業制限やオフィス消灯といった施策だけでは、組織に根付いてしまっている『働き方』を変えることにはなりません。むしろ、現場状況を省みない施策では、間に合わない分の仕事がサービス残業化したり、職場での経営・人事への心理的距離感を生んだりしています。長時間労働を変えるには、そうした強制力の強い施策に加えて、組織風土やマネジメントといったソフトな部分を変革する施策も両輪で進めるべきです。
前者を『外科手術』的な対策とするならば、後者は『漢方』的な対策です。漢方は時間がかかりますが、『手術』だけでなんとかしようとするのは誤りだ、ということです」
(福田和郎)