株式投資において個人投資家が用いる手法は、大きくわけて二つある。
ひとつはファンダメンタルズ分析で、企業の本質的な価値判断をもとに、割安と判断される会社の株を買うか、成長性が高いと判断される企業に投資する手法。もう一つが、テクニカル分析。株価チャートそのものや「テクニカル指標」と呼ばれる数々のツールを用いて予測を行う分析手法だ。
「投資の神様」バフェット氏が重視する指標は?
ファンダメンタルズ分析は、その会社の安定性(自己資本比率など)や成長性(EPS=一株あたりの利益の増加率など)、収益性(ROE=自己資本利益率など)を重視する。とくにEPSとROEは、「投資の神様」とも呼ばれるウォーレン・バフェット氏が重視している指標といわれている。
一方、ファンダメンタルズ分析とはまったく異なる視点から株価の動向を分析する方法が、テクニカル分析。テクニカル分析は、これまでのすべての投資家の売買の記録がチャート上に残されているから、それらを分析することで可能性の高い将来の値動きを予測することができるという考えに基づいている。ファンダメンタルズ分析と合わせて取引の根拠とする投資家もいる。数あるテクニカル指標のうち、代表的なものをいくつか紹介したい。
テクニカル指標には、大きくわけて2つのグループがある。1つはトレンド系指標と呼ばれるもので、相場全体のトレンドを測るために用いられる。トレンド系指標で最もよく使われているのが移動平均線(MA)だ。ほかには、ボリンジャー・バンドや一目均衡表、ドンチャン・チャネルなどがある。
もう一つのグループは、オスシレーター系指標と呼ばれるものだ。たとえば、RSI(レラティブ・ストレンクス・インデックス)、MACD、CCI(コモディティ・チャネル・インデックス)、ATR(アベレージ・トゥルー・レンジ)などがある。こちらは相場の上昇や下落の強さを測ったり、ボラティリティ(変動幅)の大きさ(高低)を評価したりするために用いられている。
一般的な手法では、テクニカル指標とオスシレーター系指標を一つずつ選んで使うことが多い。たとえば、ボリンジャー・バンドとRSI、のように組み合わせる。
「タートル流投資の魔術」を知っているか!?
では、長期間にわたって実績を上げてきた手法は、どのようなテクニカル指標を用いてきたのだろうか――。1980年代、米国で二人の大物投資家がある賭けをした。一人は「投資は天性の才能が必要で、誰かに教えることはできない」と言い、もう一人は「誰かに投資を教えて、投資家を育てることは可能だ」と信じていた。
どちらが正しいかを実証するため、全米から総勢20名の投資家の卵を集めて二人が投資教育を行った。これが「タートルズ」と呼ばれる計画だ。
わずか19歳の若さで育成チームに抜擢されたカーティス・フェイスは、育成期間終了後の4年間で、与えられていた200万ドルの資金を、3200万ドルに増やすことができた。年利100%(複利)という、驚異のリターンである。
実際、タートルズの3人に2人は利益を上げる投資家になったという。自身の著作で公開された当時の手法は、トレンド系指標としてドンチャン・チャネル、オスシレーター系指標としてATR(アベレージ・トゥルー・レンジ)を用いるものだった。
この手法を使って、数多くの利益を上げられる投資家がこの世に生み出された。「タートル流投資の魔術」(徳間書店刊)の取引手法は、相場の動きが乏しかった1990年代前半にパフォーマンスが低下したが、80年代から2018年現在に至るまで、ほとんどの期間で一貫して利益を上げていることが過去の主要な株価チャートから判明している。
「タートル流投資の魔術」で紹介されているのは、純粋なテクニカル分析の投資方法だ。
一方、同じテクニカル分析でも、テクニカル指標ではなくローソク足チャートを用いた分析(プライス・アクション)や、出来高分析といったものもある。興味があれば、調べてみるとおもしろいだろう。(ブラックスワン)