「定性」と「定量」 2軸評価の「間」の取り方
「定性」だけでもダメ、「定量」だけでもダメ、ならばその間をとるのがよかろうとなるわけですが、この間のとり方が難しいのです。携帯電話会社一次代理店を10数店舗経営するD社のT社長から、評価制度見直しについて、こんなお悩み相談を受けたことがあります。
「窓口での販売実績だけで評価をしたのでは店舗ごとの環境の違いもあるし、他のスタッフに事務仕事を押し付けて獲得に走る者もいる。公平感を期する意味で数字的な実績に私が印象点をプラス・マイナスしようと思ったのですが、このプラス・マイナスは社長の個人的好き嫌いが加味されるのではないかと、店長以下スタッフが疑心暗鬼になってしまいまして、導入を躊躇しています。どうするのがいいのでしょう」
私がT社長にアドバイスしたのは、「定量」「定性」どちらにも基準をつくって、それを「見える化」する2軸評価の導入でした。たとえば、ひとつ目の評価軸を実績数字の目標達成度として、100%以上をA評価、80~99%をB評価、80%以下をC評価とします。これが「定量」部分の評価軸です。
もう一つの軸を業務姿勢として、社長が社員に守ってほしいこと、たとえば協力姿勢とか、残業削減とか、後輩指導とかを具体的に評価項目として見せます。それを同じようにA、B、Cの3段階で評価し、これを「定量」の評価軸とします。
2軸をクロス評価することで、3×3の9段階評価ができ上がることになるのです。
この評価のポイントはやはり「定性」部分。数字では見えないので、なぜその評価になったのか、理由を評価通知時にフィードバックして、何をどのようにがんばったら評価が上がるのか、それを具体的に伝えることなのです。
D社の2軸評価は導入から10年近くが経ちますが、ここ2~3年でようやく落ち着き、それによって定着率も安定するようになりました。
M1審査の問題も、「定性」「定量」のふたつの評価をうまくミックスし、審査員独自の評価軸を維持しながら、どのように客観性を担保するのかが今後の課題なのかもしれません。同時に長い目でみた改革への覚悟も必要でしょう。
評価方法というものが安定するには、根気強く続けるということが、評価制度の変更を手がけてきた実感でもあります。(大関暁夫)