テレビでその年のナンバーワン漫才芸人を決める人気番組「M1グランプリ」で、特定の審査員の評価が自分の好き嫌いで決めているのではないかと、一部の漫才芸人がSNSで暴言を吐いて炎上するという事件が、世間を賑わせています。
事の発端は、「M1グランプリ」審査員の元女性漫才師であるベテランタレントが、審査講評の中で特定の出演者に対する好き嫌いとも受け取れる発言を繰り返したことに、不愉快に思った出演芸人らが酔った勢いに乗じてSNSで彼女の悪口を言ったという流れです。
この手の審査というものは、明確な基準がなく言ってみると審査員任せの評価になりがちです。完全「定性評価」とでも言うのでしょうか。中小企業の人事評価にも通じるところのある、人が人を評価することの難しさを絵に描いたような実例で見せられた思いです。
M1審査は「ハロー効果」に陥った
中小企業の人事評価の初期段階は、M1審査と同様の100%「定性評価」からスタートします。当初は、M1審査以上に独断になる社長の単独評価です。次の段階が、管理者と社長の複数評価者による定性評価です。
社長、担当役員、部長と、3人程度の管理者が、「あいつは今期よくやった」「あいつはイマイチだった」と、それぞれがそれぞれの基準で感じるところに意見を出し合って最終評価を決める。そんなスタイルです。
この段階までは、「定性評価」というと聞こえがいいですが、結局のところは鉛筆ナメナメ評価といえる状況なのです。
一般的に言われる、陥りやすい「定性評価」の代表的エラーは、どこか1点に優れているものがあるとすべてがその評価に引っ張られがちになるという「ハロー効果」と言われるもの。自分の得意分野や専門分野に辛く、苦手分野や非専門分野に甘くなるという、対比誤差と言われるものなどがあります。
今回問題になったM1の女性審査委員も、どうやらこれらに類する評価エラーがあったといわれても仕方のないところだったようには思えます。
「定性評価」に偏りすぎた人事評価は、確実に不平不満が出ます。M1の場合のようにそれぞれキャリアやパーソナリティの異なる審査員を7人揃えることでバランスを取り、ある程度の公平感を測っているのだろうとは思われますが、やはり極端な評価をした人間がいるとわかれば、評価される側から不満が出ることは避けられないのです。