「掃除係」に認定 みんなのゴミを捨てていた、ある社員の決断(篠原あかね)

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   年末が近づき、メディアのあちらこちらで「片づけ術」や「大掃除」が特集されます。私は子供のころから「3度の食事よりも掃除好き」というくらい片づけが大好きで、こうして原稿の締め切りが迫り、焦っていながらもクロゼットの片づけをしたくてうずうずしています。

   その一方で、最近は「ゴミ屋敷」「汚部屋」など、世の中には片づけが苦手な方もたくさんいるようです。さて、今回は片づけにまつわる、ある男性の悩みについてお話します。

  • こんなものがデスクにあったら……
    こんなものがデスクにあったら……
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「スメハラ」では片づけられない惨状

   彼はずいぶん前に私の研修を受講した方で、受講後もこまめに近況を報告してくれる好青年です。その彼から「会社を辞めたい」と相談がありました。希望どおりの会社に入社して張り切っていた彼にいったい何があったのでしょう――。

   理由を聞くと、「職場が汚いから」と言います。長年、人材業界に身を置いていると「職場のトイレが和式だから」とか、「ビルが古臭いから」など、50代の私には「そんな理由で辞めるの?」と思うような退職理由もあります。

   ところが、職場の状況を聞いて、ひと言。「えっ~! それは汚いよ」。

   彼の職場では、昼食は自席で取るのが慣習らしく、昼時になるとコンビニ弁当やファーストフード店のテイクアウトなどをデスクの上に広げて食べ始めます。

   職場内にさまざまなニオイが充満するのですが、まぁここまでは「スメルハラスメント」として語られるよくある話。問題はその後なのです。

   食べ終わったゴミを自席に放置して捨てないというのです。それも一人ではなく何人も。パソコンの横にコンビニ弁当や空き缶、ペットボトルがゴロゴロ。そして足元には前日のゴミの数々。清掃業者が入らないので、社員が自分で片づけることになっているそうです。

   彼は視界に入るゴミの数々で仕事に集中できず、そして気分が悪くなるそうです。これはもはや「ゴミハラスメント」では!

   そこで私は「とりあえず自分がゴミを捨てるついでに周囲の人のゴミも捨ててあげたら? 先輩たちも捨てなきゃと気づくかも」と言ったのです。

社長に直訴も取り合ってもらえず......

   希望どおりの職業に就きながら、ゴミが気になって辞めるなんてもったいないと思いました。

   そこで彼は、ゴミ捨ての際に周囲の社員に「一緒に捨てておきますね」などと声をかけながら捨てることにしました。先輩たちがゴミ捨ての必要性に気づいてくれたら、と期待して。

   ところが彼の思いと裏腹に、彼は「掃除係」認定されてしまい、他の社員はますます片づけなくなったというのです。

   彼は次第に出社時になると気分が落ち込み、社長に直訴しても取り合ってもらえず、結局会社を辞めました。

   彼がいた会社は、社員の多くが片づけ下手という珍しいケースでしたが、どの会社のも片づけ下手な人は一定数います。

   「整理整頓」は不用品を処分し、使いやすいようにルールを決めて使ったら元の場所に戻すことが基本です。片づけを習慣化することは、思考の整理と効率的な仕事に繋がります。職場内の整理整頓は、情報紛失など不祥事防止はもちろん、働きやすい職場環境のためにも必要です。

   清潔な職場で、新しい年を気持ちよく迎えたいですね。(篠原あかね)

篠原あかね(しのはら・あかね)
リクルートにて企業研修アシスタント、金融機関等での役員秘書を経てビジネスマナー講師として活動。2011年よりスマートコミュニケーションズ代表。ビジネスマナー、コミュニケーション、CS向上等の企業研修のほか、自身の宴会幹事経験をもとに「愛される宴会部長セミナー」も主催。著書に『宴会を制する幹事は仕事も制す。』『マンガ 黄金の接待』(監修)などがある。お客様や社内で愛されキャラになるコツを悩める社会人へ発信中。
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