相場の世界は、論理的な説明ができない事象も数多く存在する。「アノマリー」と呼ばれるものが、その一例だ。
野村證券のホームページによると、アノマリーとは効率的市場仮説では説明のつかない証券価格の変則性をいう。明確な理論や根拠があるわけではないが、当たっているかもしれないとされる相場の経験則や事象である場合が多い。
たとえば、「1月効果」「5月に売り逃げろ(Sell in May and go away)」「曜日効果」「モメンタム効果」「リターン・リバーサル」「低PER効果」「小型株効果」などがある。
1年で10月は要注意!
ほとんどの株価の形成理論や経済学では説明することのできない、株価の値動きに関する数多くの経験則が、腕利きの投資家のあいだでは知られているようだ。
「アノマリー」には、月ごとの値動きの特徴をまとめたものがある。1月には、日経平均株価が上昇しやすいことが知られている。そして1月の値動きが堅調ならば、その年の株価は比較的堅調に推移する傾向があるが、逆に1月の推移が悪いとその年はあまり株価上昇が期待できないようだ。
1月が上昇しやすいからか、2月は株価が軟調になりやすいことも知られている。2016年2月と2018年2月には、原因不明の株価急落が発生している。
株が薄商いになりやすい時期もある。お盆休みのある8月やクリスマス休暇のある12月、日本市場ではゴールデンウイーク(GW)の谷間の平日などがそれに該当する。とくにクリスマス休暇は、キリスト教圏である欧米の機関投資家が家族を連れてバカンスに出かけるため、薄商いになりやすく、世界的に株価の急落は起こりにくくなる。
外国為替証拠金(FX)取引や米国株、欧州株を取引する人は注意したい。
世界的にみて、株価が急落しやすい月もある。1987年のブラックマンデー、2008年のリーマン・ブラザーズ破たん後の世界的な金融危機は、いずれも10月の出来事だ。世界的な金融危機は、日本株市場にも大きな影響を与える。10月は要注意だ。
実際、2018年も10月10日に米国株式市場で突如として急落が発生している。それを受けて、翌11日の日経平均株価も一時は1000円を超える急落となった。
株式相場には、さまざまな「経験則」がある
選挙に関する「アノマリー」もある。日本では、衆議院選挙前の1か月は株価が上がりやすいとされるが、なぜか参議院選挙前は必ずしも当てはまらない。
欧米諸国の場合、大統領選挙後は株高になりやすい傾向がある。米国では、中間選挙の年に株価が安値となる傾向があり、中間選挙から大統領選挙の年にかけて株価は上昇しやすいというアノマリーもある。米国株式市場の動向は世界中の株式市場に影響を与えることが多いため、注意が必要だ。
時間帯に関するアノマリーもある。FXのトレーダーのあいだで知られる話として、9時から15時までを東京時間、16時から21時頃までをロンドン時間、22時から翌朝までをニューヨーク時間と区分するものだ。
それぞれの時間帯に特徴があり、東京時間の終了直前の14時から15時や、ロンドン時間の終了直前の20時から21時頃は、「逆張り」のトレードが優位性をもつといわれている。これは「東大院生が考えたスマートフォンFX」(扶桑社刊)に詳しく書かれている。
株式の銘柄に関するアノマリーもある。時価総額の小さい銘柄は、市場平均よりも高い収益性をもたらすという経験則が知られている。これを小型株効果という。
また、不祥事が発覚して急落した会社は、その株式が本来の価値を大幅に下回るまで売られてしまうため、大底をつけた後にジワジワと上昇していくことが多いというものもある。 株式相場には、さまざまな経験則がある。これらを調べることで、これから起こる可能性の高い値動きがある程度予測できるようになるかもしれない。(ブラックスワン)