「外国人材拡大」を日本に住む外国人に聞く 一番困っている問題は意外にも......

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   外国人労働者の受け入れ拡大を目指す改正出入国管理法が、2018年12月8日に可決・成立したが、当の外国人はどう考えているのだろうか――。

   日本に住む外国人の約3割が給与面での差別的待遇を受けていると感じており、また日本語の難しさにより事務手続きの煩雑さに困っているなど、多くの課題があることがわかった。日本在住の外国人向けメディアを運営する「YOLO JAPAN」が実施した入管法改正に関する外国人への意見調査で浮き彫りになった。

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日本に住む外国人の3割が給与面で差別待遇

   YOLO JAPANには、現在218の国と地域の外国人5万6000人が登録している。改正出入管法が成立しても、技能実習生の失踪問題など、日本企業の受入体制が疑問視されているため、今後の外国人受け入れ拡大に向け、日本に住む外国人に現状の問題点や外国人と日本人が共存していくための課題について、アンケートを実施した。

    まず、「日本に住む外国人が増加することに対してどう思うか」を聞くと、68%が「よい」と歓迎。「悪い」と答えた人は4%しかいなかった。

   外国人からも日本の人口減少と労働力不足について、真剣に考えているコメントが多く寄せられた。

「少子高齢化が進む日本に、人手不足の解消や経済面で役に立つことができる」(フィリピン、埼玉県・28歳女性)
「日本国民の平均年齢は46歳で、世界一高齢化が進んでいる。日本が世界に心を開き、多くの外国人が働くことで、減少している労働人口を補充できる」(アメリカ、東京都・40代男性)
「ビジネスと文化がますますグローバルになってきているので、日本にとって外国人たちを知ることはよい機会だと思う」(カナダ、長野県・20代女性)
「日本はとても美しく、豊かな文化をもっています。多くの外国人が日本の文化を理解し、日本も他の国の文化を理解していくことで、相互理解と国際的な友情関係が育まれると思う」(フィリピン、秋田県・30代男性)

   などと、好意的なコメントが続く。

   しかし、「現在の賃金について、同じ内容の仕事をしている日本人よりも低いと思うか」と聞くと、26%の外国人が「低い」と答えた。話題になっている技能実習生だけでなく、それ以外の就労ビザでも全体の約3割が日本人よりも低い。つまり差別的待遇を受けていると感じている結果となった。「どちらでもない」が63%、「高い」が12%だった。フリーコメントを見ると、「高い」と答えた人は語学教師や外資系企業で働く人が多い。

日本語の難しさより困る事務手続きの煩雑さ

   日本人よりも賃金が「低い」と答えた人は、こんな意見を述べている。

「日本人のほうが給料はよい。なぜなら私は基本的な日本語しか話せないから。この差を埋めるためには、双方の努力が必要だ。日本企業はそれぞれの業務基準によって必要な英語スキルを向上させ、外国人も日本語を勉強しなければならない」(セネガル、東京都・20代女性)
「はじめは今より高い給料でのオファーだった。しかし、母国での勤務経験はカウントされず、結果母国よりは給料はよいが、日本人と比べると低くなった」(フィリピン、東京都・50代男性)
「日本人講師はボーナスがあるが、外国人講師にはボーナスがありません」(カナダ、兵庫県・20代女性)

   「日本で暮らすうえで、問題や障害に感じていること」を聞くと、外国人が日本の生活で一番困っているのは、意外にも日本語の難しさという言葉の壁より、「さまざまな事務手続きが難しい」(26%)ということだった。次いで「日本語ができない」(21%)、「情報にアクセスしにくい」(14%)。この3つが大きな障害になっている。

   「事務手続きの難しいさ」には、具体的には「いろいろな手続きが外国語に対応していない」「海外のクレジットカードに対応していない」「書類での手続きが多すぎる」「税金関連の情報が難しく、外国人に明確ではない」「クレジットカードやローンの取得は簡単ではない」といった声があった。

ベトナム人女性「いい会社で働けるのは10人に1人」

   技能実習生の問題について、調査では回答者の中から実際に技能実習生として働いているベトナム人女性(25歳)にインタビューしている。

――(国会などで取り上げられた)技能実習生の問題について、どう思いましたか?
「とてもよくないことです。日本にとっても、私たちにとっても大きなダメージです」
――技能実習生問題は、ベトナム人コミュニティーではどのように語られていますか?
「母国でも多くの人が心配しています。なぜなら、この問題がクローズアップされることで、日本で働きたいと思っている多くのベトナム人が日本で働けなくなる可能性もあると考えるからです」
――日本で働くことについてどのような印象を持っていますか?
「とてもよいことです。日本は素敵な国で、私が一緒に働いているスタッフはみんなとても親切で待遇も悪くありません。しかし、他のすべての会社がそのような会社ではないと思います。おそらくいい仕事に就けるのは10人に1人くらいでしょうか。私の多くの友達は就職先で苦労しています」
――日本で生活する上でどのような点に困っていますか?
「あらゆる事務手続きがとても大変です。言葉の問題ではなく、手続きをするための条件がとても厳しいのです。たとえば、ベトナムでは携帯端末とSIMカードがあれば携帯電話を使えますが、日本では銀行口座や個人情報に関する書類などが必要です。とても驚きました」

   改正入管法では技能実習生制度の問題点が大きく取り上げられたが、この調査では実習生以外の外国人労働者も不当な待遇に甘んじるケースがあることが見えてきた。また、多くの外国人が住居の確保や銀行口座開設などのさまざまな事務手続きの場面で苦労していることもわかった。外国人の目線に立って、暮らしやすく働ける環境を整えていくことが大切だろう。

   なお調査は、2018年11月26日~12月7日に日本在住で就労ビザを持っている外国人290人にインターネットを通じてアンケートを実施した。12月10日の発表。国籍の上位10か国は、アメリカ(12%)、フィリピン(10%)、インドネシア(7.3%)、スペイン(4.6%)、インド(4.2%)、マレーシア(4.2%)、イギリス(3.9%)、ドイツ(3.9%)、フランス(3.1%)、ブラジル(3.1%)だった。(福田和郎)

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