SDGs(持続可能な開発目標)は開発途上国だけでなく、先進国が抱える課題の解決も目指しています。SDGsの達成を目指すために、日本として解決すべき課題はどういったものがあるのでしょうか――。
前回「SDG Index」について触れましたが、こうした外部からの評価にとどまらず、日本の立場から、SDGsの視点でどのような課題に取り組むか洗い出すことも重要です。
日本政府の取り組み
日本政府が立ち上げた「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部会合」では、日本として取り組むべき8つの優先課題(「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」)を示し、具体的な取り組み、「アクションプラン」を策定しています。
【優先課題と具体的な取り組みの概要】
(1)あらゆる人々の活躍の推進(SDGsの目標1、4、5、8、10、12に該当)
働き方改革の着実な実施、女性の活躍推進、ダイバーシティ・バリアフリーの推進など
(2)健康・長寿の達成(SDGsの目標2、3に該当)
データヘルス改革の推進、国内の健康経営の推進、感染症対策をはじめ医療の研究開発など
(3)成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション(SDGsの目標2、8、9、11に該当)
途上国の科学技術イノベーションや産業化に関する国際協力、農山漁村の活性化、地方を始めとする人材育成など
(4)持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備(SDGsの目標2、6、9、11に該当)
レジリエント防災・減災、災害リスクガバナンスの強化、質の高いインフラの推進など
(5)省エネ・再エネ、気候変動対策、循環型社会(SDGsの目標7、12、13に該当)
徹底した省エネの推進、再エネの導入促進、気候変動対策、持続可能な消費の促進など
(6)生物多様性、森林、海洋等の環境の保全(SDGsの目標2、3、14、15に該当)
持続可能な農業の推進や、林業の成長産業化、海洋資源の持続的利用推進、海洋ゴミ対策の推進など
(7)平和と安全・安心社会の実現(SDGsの目標16に該当)
子どもの安全、女性に対するあらゆる暴力の根絶、マネーロンダリング、テロ資金供与対策など
(8)SDGs実施推進の体制と手段(SDGsの目標17に該当)
地域の環境課題と社会課題を同時解決するための民間活動支援、国内でSDGs関連の課題解決に取り組む企業の支援、途上国のSDGs達成に貢献する企業の支援など
※ 出所:持続可能な開発目標(SDGs)推進本部会合(第5回)「拡大版SDGsアクションプラン2018 ~2019年に日本の『SDGsモデル』の発信を目指して~」(2018年6月15日)より大和総研が作成
SDGsは全員が「主役」
こうした課題を政府や官公庁といった公的部門だけで2030年までに解決するのは難しく、民間の力が期待されています。
解決に必要な人員や資金などのリソースが限られるということもありますが、いずれの目標も、多くの人の協力なしには達成できません。
たとえば、優先課題(5)では省エネの推進や持続可能な消費の促進が掲げられていますが、政府がいくら制度を整備しても、企業や消費者が広く実践していかなければ、絵に描いた餅に終わってしまいます。
いかに多くの人が理解して取り組むかが、SDGs達成に向けた重要なポイントと言えるでしょう。(大和総研 金融調査部・主任研究員 太田珠美)