「QUEENブーム」が止まりません!
フレディ・マーキュリーの半生を描いた映画「ボヘミアン・ラプソディ」は相変わらずの快進撃で、公開から5週目の週末も興行収入が「異例」の前週超え! CDやDVD、関連書籍まで次々と売り上げ上位にランキングされるなど、もはや「QUEENブーム」は世界的な「社会現象」になっています。映画業界では、すでに二匹目のドジョウを狙った動きも......。
マイケル・ジャクソンもビートルズも超えた!
今回の「QUEENブーム」の引き金となった映画「ボヘミアン・ラプソディ」は、現在(12月上旬)はなんと、世界73か国で公開されています。全世界累計興行収入は5億9659万ドル(約677億円)に達し、たった1か月ちょっとで2018年世界興行収入トップ9にランクインする快挙を続けています。
年末までにどれだけ順位を上げるのか、楽しみになってきました。
この映画の製作費は5200万ドル(約60億円)と、言われています。製作・配給を担当した20世紀フォックス社は、元手をとっくに回収済み。想定外のウルトラヒットぶりに、笑いが止まらない状況でしょう。
「QUEENブーム」は映画だけにとどまりません。
世界中でCDやDVDの売り上げが伸びていますが、先日、大ヒット曲「ボヘミアン・ラプソディ」のグローバル・ストリーミング再生数が世界で16億回を超え、20世紀の楽曲で最もストリーミングされた曲になったと発表されました。
Queen's Bohemian Rhapsody becomes most streamed song from 20th century
(クイーンの「ボヘミアン・ラブソディ」は、20世紀の楽曲で最もストリーミングされた曲になった)
ユニバーサル・ミュージックが、スポティファイやアップル・ミュージックを含むオンデマンドのサービスや、ユーチューブでの配信を通じたストリーミング回数を調べた結果だそうですが、あのマイケル・ジャクソンやビートルズの曲はTOP5にランクインしていません。
いかに「ボヘミアン・ラブソディ」が世代を超えて愛されているかわかります。元祖QUEENファンはLPレコードやCDの世代ですから、ストリーミングの世代も巻き込んでいるのですね。
ちなみに、QUEEN映画の成功ぶりに刺激を受けたのか、ポップ・ミュージックの帝王「プリンス」の楽曲を用いた映画が企画されていると報じられています。果たして「二匹目のドジョウ」はいるのでしょうか?
これからも、「QUEENブーム」の影響はいろんなところに飛び火しそうですね。
フレディは「変わり者」? 最高級の誉め言葉とは
じつは、映画「ボヘミアン・ラプソディ」の前評判はそれほど高くありませんでした。「事実と違う」「神聖化しすぎ」などといったマイナス評も多く見られました。
なぜ、これほどまでに全世界で「ウケて」いるのでしょうか。
先日、私もようやく映画を観ましたが、「予想外のブーム」になっている理由がわかりました。とにかく、鑑賞後に「じわじわくる」のです!
もちろん映画も感動的ではあるのですが、その後にQUEENの曲を聴きなおしたり、リアルタイムでは知らなかったデビュー当時のエピソードなどを知るにつれ、「もっと知りたい」「もっと聴きたい」気分が盛り上がるのです。
当時のコアなファンよりも、なんとなくQUEENを意識していた「潜在ファン」が、その魅力にあらためて気づき、今になってCDやDVDを購入しているのではないでしょうか?
ギタリストのブライアン・メイが最近のインタビューで語っていましたが、映画にも登場する1985年の伝説のライブ「ライブ・エイド」に出演したとき、メンバーは「そんなに盛り上がらないだろう」と思っていたそうです。
QUEENの出演が決まったときにはすでにチケットは完売。QUEEN目当ての観客はいないと予想していたので、会場の「想定外」の盛り上がりが信じられなかったとのこと。観客の中にもQUEENの「潜在ファン」がたくさんいた、というでしょうか。
ブライアン・メイは、同じく最近のインタビューで、フレディ・マーキュリーのことを次のように評していました。
He was sure was unique.
(フレディは、比類の無い存在だ)
I've never met anybody like Freddie in my life, before or since, and it's probably not going to happen again.
(僕はフレディのような人に、フレディに会った前も後にも出会ったことがない。そして、おそらく二度と出会うこともないだろう)
さて、「今週のニュースな英語」は、ブライアン・メイのことばから「unique」(ユニークな、唯一無二の)を取り上げます。
じつは、英国では「ユニーク」は「誉め言葉」としても使われます。
個性を大事にする英国人にとって、「他人と違う」「変わっている」つまり「ユニーク」と評されるのは、最高の誉め言葉なのです。
「みんなと同じ」をヨシとする日本の風潮とはまったく逆の傾向ですが、私のロンドン時代の同僚も、子どもの自慢をするときは「ユニークさ」を競い合っていました。
His presentation is unique
(彼のプレゼンは天下一品だ)
「唯一の」という意味で、ウエブのユニークユーザーという使い方もあります。
unique visitors to a website
(ウエブサイトの個別訪問者)
ビジネスの場面では、「独自の」といったニュアンスでよく使われます。
take a unique approach to~
(~に対して独自のアプローチをする)
フレディ・マーキュリーの「ユニークさ」については、誰もが認めるところでしょう。ブライアンが贈った英国流の最高の誉め言葉に、思わず胸が熱くなってしまいました。マイ「QUEENブーム」は、まだまだ鎮火しそうにありません。(井津川倫子)