「ビジネスにつながる出会いがしたい」若手経営者の懇親会の過ごし方(大関暁夫)

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   銀行員時代から、企業経営者が集まる懇親会の類には数多く出席をしていますが、この手の場の過ごし方、活かし方は人それぞれであります。

   たいていのベテラン経営者は、同年代の顔見知りを見つけては話に花を咲かすのが上手なものです。一方の若手経営者も、さすがに経営者ともなると参加する以上、「壁の花」になるというケースはあまりないのですが、そのパターンは大きく2とおりに分かれるように思っています。

  • 長老経営者の隣は居心地悪いけど……?
    長老経営者の隣は居心地悪いけど……?
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長老との名刺交換はなんの役にも立たない?

   ひとつは、何かと話題の合いそうな比較的年齢の近そうな参加者を探して話の輪をつくるタイプ。今ひとつは、むしろ年代の違う層に果敢に挑んで、いろいろ質問をぶつけてみるタイプです。

   経験的には世代関係なしに、まんべんなくさまざまな参加者と話題を交わすことが、思わぬ出会いや気づきを得させてもらうことにつながるケースも多いのではないかと思っています。

   ですから、私自身がこの手の集まりにおいて年齢的にベテランの部類に入るケースも多くなった最近では、進んで若手経営者と話す機会をつくるように心がけてもいます。

   そんなある時、比較的若手経営者が多く参加している、私が主宰するビジネス交流会での参加者の輪の中で、意外な声が聞こえてきました。

「この集まりは若い人が多いから活気もあってとても気に入っています。他の異業種交流会とかでは、半分引退したような長老的経営者も多かったりしてビジネスにつながるような出会いが少ない集まりも多いですから。彼らと名刺交換をしたところで、何の役にも立ちませんから」

   うちの交流会を気に入っていただき、お褒めいただくのは主宰者として大変ありがたいことではありますが、ちょっと気になったのは年長者を敬遠するような一言でした。

   確かに、自分よりも何十年も経験が豊富な経営者は、ただでさえ口うるさい年寄りであることも多く、若手が何か言おうものなら「最近の若い者は......」と説教でもはじめられかねない。そんな警戒感があるのかもしれません。

ライザップ・40歳の瀬戸社長がヘッドハントした事業再建のプロ

   先日来、新聞紙上を賑わせている話題として、「結果にコミットする」減量トレーニングのライザップが損益予想の大幅な修正により、赤字転落するというものがあります。

   同社は、本業は順調に推移しているものの、M&A(企業の合併・買収)による急激な業容拡大が思うように軌道に乗らず、グループとしての業績の足を大きく引っ張る形となってしまったとのこと。ここ2年ほどのM&A攻勢で、現在同社のグループ企業は80社を超える大所帯になっており、その大半が業績不振で買い叩いてグループに加えたM&A先という状況です。

   ライザップを率いるのは、40歳と若い瀬戸健社長。本業が好調でおカネがあるから、貸してくれる先があるから、経営者として若さに任せて欲しいものを次々と買い漁った結果として、見かけの安い買い物が結果的に高くついてしまった。そんな状況にあると言っていいかもしれません。

   しかし、この苦境からの脱出に向けた瀬戸社長の思い切った決断には、賞賛の声も聞こえています。その決断とは、菓子メーカー大手のカルビーの松本晃会長のヘッドハントです。

   松本氏は事業再建のプロとして知られる名経営者で、御年71歳。瀬戸社長とは親子ほども年の差のある企業経営のプロフェッショナルです。創業者でもある若手オーナー社長が、経済界の重鎮でもある大物経営者を共同経営者として、自ら進んで向かい入れるなどということは、抵抗感があってできないと常識的には思われるところです。

   しかもさらに驚かされたのは、二人が旧知の仲ではなく今年(2018年)1月に瀬戸社長からのアプローチで、初めて面談したという点。素晴らしい柔軟性であると思わされます。

   瀬戸社長に、なぜそれができたのでしょう――。その理由は、ビジネスに対する彼の信条と、それに基づく行動に見出すことができそうです。

長老経営者の「使い道」

   瀬戸社長は、「足りないものがあれば、分け隔てなく一つひとつ自分で探し出す」というのが、その信条といいます。

   企業買収も基本的は同じ。足りないものを分け隔てなく、自ら探すことで進められたわけです。そして、それが不調に陥っていると察知するや、再び足りないものを分け隔てなく自ら探し、親子ほども歳が違うことに何の躊躇もなく、事業再建のプロの松本氏に行き着いた。今回の一連の流れはそんな印象が強いです。

   ライザップが松本氏の手腕によって業績回復となるか否かはまだわかりませんが、会社経営においては問題が難問であればあるほど経験というノウハウが役に立つ確率は高くなるものです。

   還暦目前の私自身の経験から言えることは、年長の経営者たちを口うるさい親父として遠巻きにするばかりではなく、多少の居心地の悪さはあっても「他人経験を手に入れる」そんな観点で近づいてみることも有効だろうと思っております。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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