中国の通信機器大手「ファーウェイ(華為技術)」の副会長でCFO(最高財務責任者)の孟晩舟(マン・ワンジョウ)氏が逮捕されるという衝撃的な事件が起こりました。
詳細は不明ですが、報道されているところを見ると、米国が経済制裁を課すイランに製品を違法に輸出した疑いとのことのようです。米中首脳会談が終わり、結論は90日先延ばしされ、市場には少し安堵感が漂っていた、その矢先のことでした。
米国の対中貿易問題は長引く
2018年は、トランプ米大統領の貿易問題に振り回された1年でした。当初は、そもそも何が問題なのか、相手国は何をどのように改善すれば事態は解決するのか、そういったことがほとんどわからず、市場関係者も手探りの状況でした。
特に一部の「事情通」と称する人たちは、「所詮はシナリオのあるゲーム。トランプ大統領は中間選挙の前に戦果が欲しいだけであり、直前まで相手にプレッシャーをかけ続けるが、最後はにこやかな握手で終わる」と、したり顔で言っていました。
しかし、そうした見方が如何に表層的であったか、今は明らかです。
決定的だったのは、10月4日、ペンス副大統領がハドソン研究所で行った「政権の対中政策」という演説でした。副大統領は、中国がこれまで行ってきたあらゆる悪事を並べ立て、これまで融和的だった対中政策を180度転換すると、明確に宣言したのでした。
演説の後ろには「China 2049」という本の著者、マイケル・ピルズベリー氏が立っていました。これまでの対中政策がどのようなもので、今後どうなるのか、彼の本を読めばわかります。
トランプ米大統領にとってみれば、貿易赤字が問題なのかもしれません。しかし、ペンス副大統領をはじめとした共和党首脳部や多くの民主党議員も、今は反中国でまとまっています。
中国に対する厳しい姿勢は、短期間のうちに終わるものではなくなりました。もしトランプ大統領の次の大統領がペンス副大統領だとすれば、この問題は最長、トランプ米大統領の8年に加え次期ペンス大統領の8年、合計16年続くということになります。
2019年、日本経済は少しずつ厳しくなる
向こう50年、100年を考えるとするならば、民主化しない中国が強大になることは問題なので、米国の政策は正しいと思います。だが、経済的には米国にとっても、そして中国にとっても、厳しいことになります。お互いに相手のマーケットを失うことになります。
たとえば、中国問題が厳しくなるとボーイング社の株式は売られますが、今後のボーイング社の売り上げの半分以上は対中国と見込まれています。売り上げの半分以上を、もし仮に失うとすれば、ボーイング社の業績に対するインパクトは甚大です。
それでも、米国経済はなんとかやっていくでしょう。問題は日本です。中国市場へのアクセスが制限された場合、影響は甚大です。
2019年、日本経済は少しずつ厳しくなって行きます。2020年の東京オリンピックに向けた建設ラッシュが2019年にピークを迎え、10月には消費増税が控えています。スマホの売り上げが頭打ちとなり、半導体の売り上げが鈍っています。
日本の場合、金融政策がギリギリのところにあり、これ以上は金融緩和も引き締めもできません。どちらに動いても経済に影響を与えます。こうした状態で、海外発の景気減速が日本を襲った場合、対応のしようがなく、日本経済の脆弱性を露呈することになるのではないかと。つまり、「ベア・マーケット」(株価下落など、ネガティブな見方を示しているマーケット)への備えが、必要になるのではないかと思います。
今後の日本経済は要注意でしょう。(志摩力男)