株式市場を明るくした平成の首相ナンバーワンは、アベノミクスの安倍晋三首相ではなく、郵政改革を成し遂げた小泉純一郎元首相。また、2018年の経済分野の「流行語大賞」は「AI(人工知能)」。そして株式市場がより発展しそうな新元号として期待しているのは「飛翔」「上昇」だった。
独立系の投信投資顧問会社「スパークス・アセット・マネジメント」が、全国の投資家に聞いた「日本株式市場の振り返りと展望に関する意識調査 2018」で、こんな結果が明らかになった。
投資家が期待する新元号1位は「飛翔」
調査によると、まず投資家に現在投資している金融資産を聞くと、「日本株式」が69.0%で最多。次いで「投資信託」(REIT以外)47.5%、「外貨・FX(外国為替証拠金取引)を含む」20.2%、「外国株式」14.2%、「日本公社債」(国債・地方債・社債など)13.4%となった。性別年代別にみると、60~70代女性では「投資信託」が65.8%で、ほかの年代より目立って高い。また、20代男性では「仮想通貨」が22.2%と、5人に1人以上の割合となった=図表1参照。
2017年と比べると、「投資信託」が41.4%から47.5%には6.1ポイント上昇、投資信託を活用している人が増えているのが特徴だ。
投資方法について聞くと、毎月決まった額をコツコツ投資する「積立投資をしている」人が27.8%、「していないが、したいと思う」が30.8%となった。特に20代では「している」が42.5%、「したいと思う」は42.5%とほかの年代より高く『コツコツ投資』が魅力的だと考える人は20代に多い。
20代が利用する「ポイント投資」「スマホ投資」
また最長20年間、利益が非課税となる「つみたてNISA」が2018年1月に始まったが、「利用している」人は16.3%、「していないが、したいと思う」は33.1%となった。年代別にみると、「している」が最も高いのは20代(29.0%)。「したいと思う」も41.5%と高く、今後ますます、つみたてNISAを始める20代が増えそうだ。
近年、買い物をしたときなどに貯まるポイントを投資に回すことができる「ポイント投資」が相次いで始まっているが、「ポイント投資を利用している」は16.2%、「していないが、したいと思う」は33.4%となった。年代別ではやはり20代が多く、「している」が33.5%とほかの年代より高い。また、スマホだけで手軽に投資できる「スマホ投資」も、全体の平均では「している」が10.3%だが、20代では28.0%と圧倒的に多い。新しい投資方法に20代が積極的に取り組んでいることがわかる。
最近、環境(environment)、社会(social)、ガバナンス(governance)への取り組みを積極的に行う企業を選んで投資する「ESG投資」が注目されている。投資意欲が高まるのはどのようなテーマに取り組んでいる企業かを聞くと、「再生可能エネルギーの利用」が27.2%で最多。次いで「環境問題の解決」25.5%、「コンプライアンス(法令遵守)体制」22.5%、「ワークライフバランスの推進」21.0%、「持続可能な開発目標(SDGs)」20.0%となった=図表2参照。
年代別にみると、30代では「ワークライフバランスの推進」(28.7%)が最も高く、従業員の働き方に配慮している企業に投資したいと考える人が多いようだ。一方、60~70代では「健康経営の推進」(27.7%)が高い。それぞれの年代で重視するテーマが違っている。
投資家の「損益」儲かりもせず、損もせず......
では、投資家にとって2018年はどのような年だったのか――。2018年の日本の株式市場を表す漢字1文字を自由回答で聞くと、1位は圧倒的多数で「乱」となり、2位「変」、3位「迷」、4位「落」、5位「下」と、芳しくない漢字ばかり続く。「乱高下が激しく、変化の大きい1年間だったから」「先が読めないから」などが理由だ。
そんな激流のなか、投資損益の着地予想はどうなるのか。「大幅にプラス着地」は3.7%、「ややプラス着地」は30.3%で、プラスになる人は合わせて34.0%。一方、「ややマイナス」20.9%、「大幅にマイナス」14.2%で、マイナスの合計35.0%となり、プラスとマイナス予想がほぼ同じになった。プラスが62.0%だった前年より大幅に下降した。2018年は投資家にとって厳しい年だったようだ。
2018年に投資家が注目したニュースで、経済分野の流行語(トレンドワード)を聞くと、1位「AI」(人工知能)、2位「仮想通貨」、3位「ゴーン・ショック」、4位「米中貿易摩擦」、5位「消費税増税」「働き方改革」となった。「AI」は昨年に続き1位で、関心の高さがうかがえる。2位の「仮想通貨」は色々と世間を騒がせたうえでの初のランクインだ=図表3参照。
今年、積極的に投資を進めようと思うきっかけになったニュースを聞くと、1位「株価上昇・株高」、2位「2020年東京五輪関連」、3位「トランプ大統領関連」、4位「消費税増税」、5位「米国の好景気」だった。2018年10月に日経平均株価がバブル後の最高値に到達したり、東京五輪開催に期待感を持っている人が多いようだ。
一方、投資に消極的になるニュースも多かった。1位「米中貿易摩擦」、2位「トランプ大統領関連」、3位は「日産自動車関連」、4位「仮想通貨関連」、5位「株価下落・株安」となり、米中間の交渉の行方に不安感を持つ人が多いことがわかる。
ところで、2019年5月に改元が予定されている。株式市場がより発展しそうな元号を自由回答で聞くと、1位「飛翔」「上昇」(同数)、3位「発展」、4位「平和」、5位「安寧」「未来」(同数)となった。それぞれの理由は、「(飛翔)飛び立って伸びていくイメージがある」、「(上昇)景気が上向きになるように願っている」など、経済が上向きに伸びていくことを願うコメントが目立つ。
2020年東京五輪後の日経平均予想は?
また「平成」を振り返り、「株式市場を明るくした平成の総理1位は誰か」を聞くと、1位「小泉純一郎」(31.1%)、2位「安倍晋三」(30.6%)が断トツのツートップとなった。3位「竹下登」(8.2%)、4位「小渕恵三」(6.1%)、5位「麻生太郎」(6.0%)となり、安倍政権下で財務相をも務めた麻生氏の評価の低さが目に付く。 小泉氏の「聖域なき構造改革」や、安倍氏の「アベノミクス」などの政策が印象に残っている人が多いようだ=図表4参照。
さて、来年(2019年)以降の経済の展望を投資家はどうみているのか――。
「消費税増税で日本の景気は後退すると思うか」を聞くと、74.2%が「そう思う」と答えた。投資家の大半が消費税増税による景気悪化を予想している。「米中間の貿易摩擦が、日本に悪影響をおよぼすと思うか」を聞くと、「そう思う」が78.5%となり、こちらも景気後退の引き金になると不安視している。また、英国のEU離脱も日本に悪影響をおよぼすと考えている人が55.1%おり、このワーストスリーが危険要因だ。
こうしたことから、2020年12月末の日経平均株価はどうなるのだろうか。投資家に大胆に予想してもらうと、平均は「2万3054円」だった。ちなみに、調査期間中(2018年11月21日~11月26日)の日経平均株価は、最安値2万1243円38銭~最高値2万1838円10銭)だから、最高値より、約1200円高い。これは、マイナス要因のワーストスリーを考慮しつつも、2020年の五輪景気に対する投資家の期待が感じられる結果となった=図表5参照。
なお調査は、2018年11月21日~26日に、全国の20~79歳の投資経験者1000人を対象にインターネットで実施。12月7日に発表した。投資対象は、日本株式、外国株式、公社債、投資信託、REIT、金・プラチナなど。(福田和郎)