社長の懐は気になって当たり前 だから、いい会社は誤魔化さずに報酬を開示する(大関暁夫)

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重鎮経営者のつぶやき「社員がかわいそうだな」

   その話を一緒に聞いていた、過去に商工会会長も務めた70代後半の重鎮経営者Aさん。T社長が話の輪から外れたのを確認して、小声でこんなことを言っていました。

「社員がかわいそうだな。社内に見られちゃいけないものなんて、つくっちゃいけないのよ。見られたくないものをつくって見せないようにしたり、嘘を言ってごまかしたりすれば、結局社員の不信を買うだけでしょ。社長が高い報酬を取るのなら、自分はそれだけのことをやっているから、それ相応の報酬をとっている、自分以上に会社に貢献している社員が出てきたら、自分以上の報酬をやるから皆がんばれ、ぐらいのことを堂々と言えばいいんですよ」

   この話を聞いて数年後に、「ユニクロ」の柳井正社長もまったく同じことを言って、自分の報酬を進んで開示したことがありました。それを新聞で読んだときに、あの重鎮経営者の言っていたことはなかなか的を射ていたんだなぁと、改めて感心したという記憶があります。

   おしなべて会社勤めの社員は、日々生活の糧を稼ぐために日夜勤務をしているわけですから、自分の報酬と共に他人の報酬にはものすごく関心があって当たり前なのです。

   一般的に真理なのは、業務内容も責任も変わらず仕事を続けているなら、報酬はより多くもらえるに越したことはない、ということがひとつ。もう一つ、自分よりも多くの報酬をもらっている人がいれば、その額がその人の働きにふさわしいのか、という比較で見がちだということ。

   もし、ふさわしくない多額の報酬をもらっている人が居ると知ったら不満を覚えるでしょうし、自分もその基準でもっと多くの報酬を受けるべきと思ったりするのです。

   だからこそ、企業にとって必要なことは、昇給昇格ルールをちゃんと制定して、併せて評価制度もしっかり開示し、何をすれば自分が受け取る報酬がいくら上がるのか、何をしたから他の社員が昇給昇格したのかが、目に見えてわかるような人事制度の整備が求められるわけなのです。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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