「はじめまして」――。ビジネスシーンで頻繁に見かける名刺交換。1枚あたりいったいどの程度の経済効果があるものなのか。「早く言ってよ~」のCMでおなじみのSANSANが、活用されていない名刺による経済損失規模を初めて調査した。2018年11月15日の発表。
その結果、日本企業における名刺1枚の価値は売上金額に換算すると約74万円に相当することがわかった。一方で約61,0%が活用されないまま眠っている状態の「冬眠人脈」といえる、1企業当たりの平均経済機会損失は推計で年間約120億円にのぼるという。
名刺1枚あたりの価値はなんと約74万円
調査によると、ビジネスパーソン1人あたりの年間名刺交換の枚数は、105.9枚。それに対して1人あたりの売り上げでは、41.3枚の生産性しか発揮できていないことがわかった。名刺1枚の価値は約74万円相当。約61.0%(名刺約65枚)に当たる生産性が眠っていることになる、とSANSANは分析した。
金額にすると、常用雇用100人以上の企業で年間平均約120億円。100人未満の企業でも約8600万円もの経済機会が失われているという推計だ。
もしも「冬眠人脈」といえる、使われていない名刺をうまく活用していたら、従業員1人あたりの売り上げは2.56倍の約7840万円となる(2015年度の国税調査から、国内における名刺交換人口は約2200万人で交換量年間22億枚。経済センサスから、従業員1人あたりの売り上げ平均3060万円から推計)。
業界別でみると、損失が最も大きいのは「製造業」。次いで「情報通信業」「生活関連サービス業」「卸売業、小売業」「医療、福祉」が続いている。
人とのつながり方でイノベーションは起こしやすくなる
早稲田大学の入山章栄准教授によると、人はホモフィリーという自分と似ている人と一緒にいるのを好みがちで、志向性の同じ人が集まりやすい性質があるそうだ。その一方で、周りの人がいつも同じ顔ぶれだと、目の前の知が尽きてしまう。違う業種や、仕事が異なる「遠くの人」と付き合ったほうが、イノベーションは起こしやすい。名刺交換はそうした「弱いつながり」ができる第一歩となる、と指摘する。
欧米のビジネスシーンでは、一度つながったらずっとつながっているのが前提とされる。名刺をデジタル化して他部門と共有するのが当たり前で、チーム同士でお互いの人脈を使い交流がもてるようにしているという。
調査では、企業における「冬眠人脈」や名刺の価値について、ビジネスパーソンにインタビューを実施。それによると、
「こんなにも機会損失が起きていることは、社長も知らないと思う。フォルダに入れて管理しているつもりになっていたが、整理の仕方で業績に影響してくると感じたので相談しようと思う」(40代女性、秘書)
「毎日必死に名刺交換に取り組んでいるが、1枚74万円とは正直驚いた」(30代男性、不動産業界)
「一回一回が大切な機会だと感じ、自分の名刺も74万円の価値があると思うと自信にもつながった」(40代男性、メーカー勤務)
といった、名刺交換の価値を認識して意欲的にとらえる声が多くあがった。