「社会不安」「治安問題」を心配する産経・読売
一方、朝日、東京、毎日などが主に「外国人労働者への人道的な面」から反対している傾向が強いのに対し、産経新聞や読売新聞は、外国人労働者が増えることに対する「社会不安」をに対して問題視する傾向が強いようだ。
先の産経新聞も、1号の人権問題を指摘しておきながら、2号の新たな人権問題をこう不安視している。
「2号ともなれば、事実上の永住や家族の帯同も認められる。これが移民とどう違うのか。定住者なら職業を自由に選べる現行制度との整合性をどうするつもりなのか。1993年に永住者は4万8000人だったが、2017年には74万9000人に達した。さらに増えてくれば、地方参政権を求める声も高まるだろう。これを認めれば、人口が激減する地域で永住者の方が多くなる危うさもはらむ」
そして、治安の悪化を招くのではないかとこう指摘する。
「外国人労働者への依存度が高まった段階で、人材を送り出している国との外交上に衝突などがあり、一斉に引き揚げてしまう事態も考えておかなければならない。日本人がほとんど就職しない業種があれば、社会機能は麻痺してしまう。多くの国で社会の分断や排斥が起こっている現実もある」
読売新聞「外国人就労拡大 不安払拭へ政府は説明尽くせ」(11月3日付)は、国民の不安解消に丁寧な説明をせよ、と政府にハッパをかけた。
「新資格の就業は、農業や建設、介護など14業種を検討しており、さらに増える可能性がある。受け入れ人数が野放図に増えるのではないか。業種ごとに想定している人数と全体の規模を早期に示すべきだ」
「安倍首相は『即戦力となる外国人材を、期限を付して受け入れる』と強調する。改正案は、人手不足が解消されたときの受け入れ停止を盛り込んだ。こうした措置だけで、『移民政策』と異なると言えるのか。法務省の外局として『出入国在留管理庁』を創設する方針だ。在留外国人の管理や、受け入れ企業の指導など、適切な態勢を整えることが大切である」
新設される「出入国在留管理庁」にしっかり外国人を管理してもらいたい、と強調している。
この点、毎日新聞「就労外国人 入管法改正案 これで支援できるのか」(11月3日付)は、「出入国在留管理庁」に対して、読売新聞の期待とはまったく逆の心配をしている。
「(就労外国人の生活支援は)どこが担うのかにも疑問符がつく。『出入国在留管理庁』が担当するのか。出入国の管理に目を光らせてきた官庁が、外国人労働者の立場で支援に当たれるだろうか。制度上、無理がある。共生社会実現への政府の姿勢が疑われるのは、外国人の受け入れ態勢の整備を地方自治体に丸投げしてきた歴史もあるからだ」
として、在留外国人の住宅や日本語教育などの生活支援を、これまで群馬県太田市など外国人が多くすむ市町が行なってきたことを明らかにしている。
いずれにしろ、安倍政権は2019年4月からの改正入国管理法実施を急いでおり、国会の論戦から目を離せない。(福田和郎)