「アンケートに1回答えると、たった1分で1万円!」「月収1000万円稼ぐ人も多数!」という詐欺まがいの悪質商法が横行しているため、消費者庁が2018年11月9日、業者を実名告発して注意を呼びかけた。
被害者は全国に約2300人、被害総額は約55億円にのぼるという。どう考えてもマユツバのトンデモ儲け話になぜ引っかかる人がいるのだろうか。
「たった1分で1万円ゲット!」
消費者庁が、消費者安全法第38条(虚偽・誇大な広告など)違反で実名告発したのは、「一般社団法人日本統計機構」(東京都港区)。その手口はこうだ。
「日本統計機構」というもっともらしい事業名で、「アンサーズ.com(コム)」と称するアンケート調査のサイトを運営、SNSなどを利用して会員を募集した。
その際の宣伝文句がスゴイ。
「たった1分で1万円をラクラクGET!」
「出題されるアンケートを提供しているクライアントは超有名企業ばかり。その数なんと1200社!」
「全会員1万8000人の平均月収はなんと400万円。月収1000万円の会員も多数」
などと掲載されている。
そして、アンケートでカネを稼ぐためには、「アンサーズ」に入会金50万円を支払い、会員登録する必要があるという。会員登録には、会費タダの仮登録と会費が必要な本登録がある。仮登録の段階でも1日10問までのアンケートに答えると「報酬画面」が出て、1万円の収益が加算されていくので、あたかもアンケートに答えるたびに現金を稼いでいる錯覚に陥る仕組みになっている。
そのアンケートたるや、「あなたの好きな食べ物は?」「よく行く飲食店は?」「どこに旅行したいか?」といった簡単な内容ばかりだ。
「カリスマ経営者」も架空の人物だった
ここで、勧誘の動画に登場するのが「神山雄一」と称する日本統計機構のカリスマ経営者だ。神山は、
「本登録して会員にならないと、仮登録時の報酬はもらえません。本登録の会員になると、高額報酬のアンケートに答えられるうえ、スタート時に50万円のボーナスがもらえます。また、○月○日までに本登録をすれば、入会金を特別に半額の25万円にします!」
と、急いで本登録するように煽るのだった。
入会金25万円を支払っても、50万円がキャッシュバックされるので、労せずして25万円が手に入るわけだ。どんどん会員登録をする者が増えた。
ところが、
「入会金を払ってアンケートに答えたのに報酬が支払われない」
「50万円が入ってこない」
などの相談が全国の消費生活センターに相次いだため、消費者庁が小林静江代表から事情聴取すると、これらの宣伝はすべて真っ赤なウソだとわかった。
「クライアントは超有名な1200社」「会員数1万8000人」「平均月年収400万円」「50万円をキャッシュキックバックする」などが全部ウソだったばかりか、カリスマ経営者「神山雄一」も架空の人物で、実在しなかった。小林代表は「全国2300人から入会金など約55億円を集めた」と語っているという。
「社団法人」にしたのは「株式会社」より安かったから
それにしても、なぜこんなにバカバカしいほど簡単なアンケートでカネが稼げると思う人がいるのか――。J-CASTニュース会社ウォッチ編集部の取材に応じた、消費者庁財産被害対策室の小泉勝基室長はこう説明する。
「やはりキャッシュバックがあると信じた人が多いからと思います。最初から、初期投資した額より高いカネが戻ってくることが約束されているわけですからね。ただし、キャッシュバックを受けた人はひとりもいませんでした」
「社団法人日本統計機構」という公の団体のようなネーミングも利いているかもしれない。そこでまで計算して、「株式会社」ではなく「社団法人」にしたのだろうか。小泉室長に聞くと、
「『社団法人のほうが株式会社より登記手続きが簡単で、しかも安かったから』と言っています。これまでの多くの情報商材の詐欺まがい商法では、消費者が儲かることはほとんどありませんが、いちおうビジネスのシステムがありました。今回は、最初から入会金を騙し取るのが目的だったと思われます」
とみている。
ずいぶん、ずさんな商法だが、簡単に高額収入が得られることを強調する広告や宣伝には特に注意が必要。
「まずは疑ってください。カリスマ指導者が収益を得ていることをアピールする商法はほかにもたくさんあります。甘い言葉には決して引っかかってはいけません」
日本統計機構は2018年11月16日、官報に解散公告を出したという。(福田和郎)