大企業社長より中小社長が長生きするワケは?
ところで、自分が理想とする退職の年齢から、介護を必要とせず元気でいられる健康寿命までの間を「ボーナスピリオド」(ごほうび期間)と呼ぶ。「退職後に人生を積極的に楽しむ期間」というわけだ。欧米では50代を理想の退職年齢とする国が多いが、日本は68歳前後。このため、15か国で「ボーナスピリオド」を比較すると、日本は最も短い9年間しかなく、一番長いオーストラリアの23年間の半分以下だったという。
老後を楽しもうという社長さんが少ないのだ。調査では、面白い質問を全国の社長さんに発している。「もし、生まれ変わったら、また社長をしますか?」だ。すると、「この会社の社長をする」が36%、「別の会社の社長をする」が22%と、6割近くが「また社長をしたい」と答えた=図表2参照。安定した「公務員になる」が13%、社長より気楽な「サラリーマンになる」が10%だった。
「○○と社長は一度やったらやめられない」というほど魅力的なのはなぜか。アクサ生命の広報担当者はこう語る。
「大企業の社長は、内部から上がってきたサラリーマン社長が多いですが、中小企業の社長さんは、苦労して家業を継いだり、自分で創業したりした人が多い。一国一城の主としてプライドと事業に対する思い入れが非常に強いのではないでしょうか」
また、社長は苦労が多い割に長生きするという研究があるそうだ。1967年からロンドン中心部で働く約2万8000人を追跡している疫学調査「ホワイトホール研究」によると、企業のトップの方が、一般社員より長生きであることがわかった。カネがあるから健康を維持できるというわけではない。同じ企業のトップでも、サラリーマン社長よりオーナー社長の方が長生きするからだ。
この研究を分析したコロンビア大学のシーナ・アイエンガー教授によると、「オーナー社長は、責任が重大であるというストレスがある半面、自分で決定できる自由度が大きいため、仕事がおもしろくて仕方なく、ストレスにならない」という。
ドラマ「下町ロケット」でもアツ~い中小企業の社長たちが次々に登場。確かに、中小企業の社長は大企業社長より地位や年収が低いかもしれないが、はるかに権限が強く、経営判断の自由は大きい。その快感がたまらないから、「生まれ変わっても自分の会社の社長をしたい!」となるのだろう。
なお調査は、2018年4~6月にアンケートを実施。全国47都道府県の6685人の社長を対象に聞いた。10月24日の発表。
(福田和郎)