値段を見てびっくり「全然安くないぞ!!」
「そちら、先日入荷したばかりの限定品で、大人気なんですよ」と、店員さん。
「ちょうど、こういうハンドバッグを探していたんです。素敵ですねぇ」
確かにいいデザインだし、できれば欲しい。ただ、「絶対に欲しい!」というほどでもなかった。しかし店員さんに嫌な思いをさせたくないので、つい媚びる私である。
「ちなみに、おいくらですか?」
「9万8000円です」
ヒィィィィィ!! 絶対に無理!!!
いやほんと、10万円もするハンドバッグをぶら下げて街を闊歩する自信も、欲もないッス!!
分不相応な高級品を手に取っちゃって、ホントすみません!!
心中で嵐のような雄叫びをあげつつ、私は平静を装った。
「そうですか......やっぱり限定ものだとちょっとお高いんですね。他も見てみます。ありがとうございました」
狼狽しつつも礼を言い、その場を立ち去る。
人それぞれ価値観はあろうが、ハンドバッグに10万円は高すぎる。そりゃあ「自分にご褒美」と言えば買えない額ではないが......どうしても「欲しくない」のである。
帰り道、つくづく考えた。これは「すっぱいブドウ」だろうか。本当は欲しいのに、手が出ないから「あんなものいらない!」と、思い込もうとしているのか?
いや、違う。私は高いモノを買って、貯金残高が減るのが怖いのだ。
ブランド物が好きな人は、それを手に入れる快楽が、金銭的な負担を上回るから買う。しかし、私はその逆だ。モノを手に入れることの快楽より、買わずにすんだ安心感のほうが嬉しいのである。
今日も貯金残高を減らさずに生活できた。ホッとする。衝動買いしなくて、本当によかった。
この安堵感が、私にとっては消費の快楽を上回る。「貧乏性」といわれればそれまでだが、貧乏性でもいいから、私は貯金を減らしたくない。10万のハンドバッグを手に入れるより、我慢するほうが「楽しい」。消費しないことが、私の消費なのだ!......
ま、貧乏性ですね。店員さん、逃げるように去って本当にすみません!(北条かや)