「ホイッスル」を吹かれたゴーン容疑者
それにしても、会社の資金でブラジルやレバノンなど世界4か国で豪邸の提供を受けていたり、社用ジェット機を私用で利用したりなどの「ケタ違いの私的流用」ぶりが報道されるにつれ、いったいどんな金銭感覚だったのかとあきれてしまいます。「V字回復劇」の裏でこんな不正がはびこっていたとは......
まるで映画かドラマになりそうなドラマティックな展開ですが、逮捕のきっかけとなったのは、日産社内からの「内部告発」だったようです。
Nissan said it conducted an internal investigation that lasted several months based on a report from a whistleblower
(日産自動車は、内部告発を受けて数か月間、社内調査をしていたことを明らかにした)
・an internal investigation:内部調査
・based on~:~に基づいて
・whistleblower:内部告発者
報酬の過小報告も、資金や経費の不正使用も、カリスマ経営者とはいえひとりでできるものではないでしょう。報道によると、幹部が司法取引に応じて調査に協力しているとのこと。少なくとも報道の世界では、「Ghosn is not gone」(ゴーンは去らない=話題の中心)の状態が続きそうです。
今週のニュースな英語は「whistleblower」(内部告発者)に関連する表現を紹介します。
文字どおり「whistle」(ホイッスル)を「blow」(吹く)する人から、「警笛を鳴らす人」「告発をする人」という意味です。不正を告発したり、通報したりする時に使います。
Whistleblower Protection Act(公益通報者保護法)
whistle-blower system(内部通報制度)
「whistle」(ホイッスル)と「blow」(吹く)を使った次の表現もよく使います。
blow the whistle on~(~を告発する)
blow the whistle on illicit behavior(違法行為を告発する)
・illicit:違法な
じつは、「whistleblower 」や「blow the whistle on」の例文を辞書で確認していたら、「告発をしたらクビになった」「告発が原因で職を失った」という例文を目にして、沈んだ気持ちになりました。
英和辞典だけではなく、英英辞典でも同じような例文がありましたから、まだまだ「内部告発」が保護されない現状があるようです。所得格差から人の幸せ、そして正義感について......。とにかくいろいろなことを考えさせられる事件です。(井津川倫子)