その68 「官製」10連休 「こんなものいらない!?」(岩城元)

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   来年2019年のカレンダーは、新天皇の即位日となる5月1日を来年限りの祝日とし、4月27日から5月6日までを10連休とする――政府はそんな法案を2018年11月13日の閣議で決め、開会中の臨時国会に提出した。

   本来なら、4月27日から29日までの3連休の後、平日が3日あり、その後の5月3日から6日までが4連休のはずだった。

   ところが、5月1日を祝日にすると、祝日法の定めにより、その前後の日も「国民の休日」となって10連休になるわけである。

  • 「10連休」を報じる2018年10月12日付の朝日新聞夕刊
    「10連休」を報じる2018年10月12日付の朝日新聞夕刊
  • 「10連休」を報じる2018年10月12日付の朝日新聞夕刊

政権の人気取りといったニオイがする

   休日が増えるのは無条件にうれしい。そう思っている人も少なくないだろう。でも、そんな人たちには、公務員とか企業の正社員が多いのではないだろうか。休んでも、給料が減るわけではないのだから、喜んで当然である。

   だが、非正規社員で、日給で働いている人たちにとっては、10連休はありがたいだろうか? たちまち、収入が減ってしまう。レストランなどサービス業で働いている人たちはどうだろうか? 10連休は書き入れ時だから、レストランなどは多分休まない。当然、従業員も休めない。客は普段より多く、てんてこ舞いさせられそうだが、その分、従業員の収入が増えるだろうか。

   10連休が報じられた後、朝日新聞に「日本中 無医村になる 十連休」という読者の川柳が載っていた。

   休日診療の病院や医院があっても、混雑するはずだ。連休明けには混雑がさらにひどくなるかもしれない。医者通いの欠かせない「弱者」にとっては、10連休は決してうれしいものではない。

   そもそも今度の10連休は「官製」である。政権の人気取りといったニオイがする。お上から言われ、「赤信号 みんなで渡れば 怖くない」式に、みんなが一緒に10連休するのではなく、もっと自主的に休暇を取りたいものである。

10日連休に子供が家にいると、その親は......

   そんなことを言いたくなったのは、日本では一般に「有給休暇」の消化率が低いからだ。厚生労働省の調べだと、日本の有給休暇消化率はずっと50%前後。一方、総合旅行サイト「エクスペディア」によると、フランス、スペイン、オーストリア、ブラジル、香港あたりは完全消化で、日本とは比べ物にならない。公務員や企業の正社員といった「強者」も周りを気にして、なかなか休めないから、官製の10連休を歓迎したくなっても、おかしくはない。

   僕は今や「毎日が日曜日」の老人だから、10連休だろうと、なんだろうと、関係のない人間である。そう思っていたが、いや、待てよ、孫たちから「10連休、遊びに行くよ」と言われれば、うれしいけれど、僕も女房も大変だ。

   学校や幼稚園、保育園に行っている子供たちに10日間も続けて家にいられては疲れる、それも春休みが終わったばかりなのに...... と嘆く親たちもいるはずだ。

   まあ、それは自分の子供だから、やむを得ないことだとしても、「弱者」にとっては、あまり喜べない官製の10連休である。(岩城元)

岩城 元(いわき・はじむ)
岩城 元(いわき・はじむ)
1940年大阪府生まれ。京都大学卒業後、1963年から2000年まで朝日新聞社勤務。主として経済記者。2001年から14年まで中国に滞在。ハルビン理工大学、広西師範大学や、自分でつくった塾で日本語を教える。現在、無職。唯一の肩書は「一般社団法人 健康・長寿国際交流協会 理事」
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