生産緑地の指定解除で、農地の引き取り手がなくなる
じつは、この仕組みが大きな落とし穴となっている。これまでにも、農業を継続できなくなり生産緑地の解除手続きが行なわれた例は多々あるが、そのほとんどは「財政が厳しい」「利用価値がない」などの理由から、市区町村が買い取りを拒否しているのだ。
つまり、生産緑地の指定は解除されると、その農地の引き取り手がなくなるのだ。
もう、おわかりだろう。1992年から登録がスタートした生産緑地指定が、2022年に30年が経過し、大量の指定解除が行われることになる。現在、生産緑地は全国に約1万3000ヘクタールも存在している。その約8割が解除されることになる。
もちろん、市区町村は買い取りを拒否するので、これらの農地は一斉に、主に宅地として不動産市場に流れ込んでくる可能性があるのだ。
そうなれば、住宅地の土地価格が下落する可能性は高い。そのうえ、少子高齢化の影響で、現在は空き家や空き地の増加が社会問題となっている。生産緑地が宅地に生まれ変わり、人が居住するようになればいいが、宅地としてのニーズがなければ、単に空き地が増えるだけになってしまうだろう。
こうした事態に危機感を抱いた国は、生産緑地の指定解除に向けた対策を開始した。国土交通省は2017年6月から、自治体が条例で定めれば、現在の生産緑地の面積要件である500平方メートルを300平方メートルまで引き下げられるようにした。これにより、都市農地が生産緑地としてとどまり、宅地化するのを防ぐ狙いがある。
国交省の三大都市圏の222自治体調査の結果では、すでに約50の自治体が条例を制定している。