「4人に1人が喫煙者」をゼロにした会社 全社禁煙に成功した方法は?

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禁煙成功者には朝礼で表彰状と「金一封」

   しかし、こうした啓発や強制手段だけでは効果が万能とはいえない。「禁煙成功者」を表彰することにした。朝礼の場で、砂原社長自ら成功者に表彰状と「健康促進祝い金」として1万円の金一封を贈った。それだけではない。成功者はその場でいかにして禁煙を達成したか、体験談を語るのだ。

「この体験談が絶大なインパクトを与えました。『俺は絶対にやめないと豪語していたあの部長までやめたのか!』という驚きです。体験談で『正直、社長の熱意はどこかで冷めるだろうと思っていたが、成功者たちの体験談が効いた。取り残され感があった』と、打ち明けた人もいました」(益満さん)

   また、禁煙外来利用者にも2万円の補助金を出した。ただし、禁煙外来に行った者は意外に少なく、約2割の9人だけ。

「医師が処方する禁煙薬に副作用があるという誤った情報が伝わったためと思われます」(益満さん)

   しかし、「身から出たサビ」なのに喫煙者ばかりに手厚く「祝い金」や「治療費補助」を出すと、タバコを吸わない人に不公平になる。そこで、不公平感をなくすために、非喫煙者にも「健康手当」として毎月3000円を支給した。年に3万6000円という大変な収入増だ。ずいぶん思い切ったものだ。

   益満さんはこう説明する。

「喫煙者だけでなく、吸わない人も含めて全社をあげて取り組むことが大事だったのです。タバコの害のスライドや動画も、喫煙者だけを集めて行なうと、暗くなるので、全社員が朝礼で見ました。たとえば、東日本大震災直後では、放射能汚染よりタバコの受動喫煙のほうが怖いという啓発動画を全員で見たものです。みんなで取り組むと、喫煙者は『よし、やめなくては』という気持ちになりやすくなります」

   メンタルヘルスの世界では、依存症の患者の治療などで、「ポピュレーション・アプローチ」という言葉がある。患者だけでなく、周辺の人々まで巻き込んで、多くの人々が少しずつリスクを負担すると、集団全体がよい方向に向かうことをいう。また、「ピア・プレッシャー」(同調圧力)という言葉もある。患者周辺の人々からの監視によって生じる心理的圧迫感のことだ。

   益満さんは、

「禁煙は個人だけの努力では難しいものです。最初からそれを狙ったわけではありませんが、結果的に全員が同じ目標を目指すことで、タバコを吸いにくい環境づくりに成功したと思います。特に、テレビ東京の『ワールドビジネスサテライト』でわが社の試みが取り上げられたのが決め手になりました。『これでもう、やめるしかないと覚悟が決まった』と言った人がいました」

と、組織で行なうことの効用を指摘する。

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