なぜ「和子」が、女性社長の世界で長年女王の座に君臨しているか? どうして沖縄県に女性社長が一番多いのか? そして女性社長の出身大学上位に意外な大学の名前が!
東京商工リサーチは2018年11月8日、2017年度の「全国女性社長調査」を発表した。今年で8回目だが、なんと8年連続で「和子」が名前のトップを占めるなど、女性社長の謎は深まるばかりだ。J-CAST会社ウォッチ編集部が調査担当者に聞いた。
上場企業の女性社長は大塚家具、マックなどたった39人
調査は、東京商工リサーチが保有する約480万社の経営者情報を元に分析した。経営者(社長)の中には、個人事業主や病院、生協、社団法人などの理事長も含まれる。その結果、全国の女性社長は41万1969人(全体の13.0%)で、調査を始めた2010年の21万人から倍増。人数も割合も年々増えている。
産業別では、「サービス業ほか」が18万9583人(46.0%)と約半分を占める。飲食業や医療・福祉関係、美容院など、女性の特性を生かした資格や、比較的少ない資本で開業できるのが特徴だ。女性社長の割合が最も高い業界は「不動産業」の22.2%。次いで「サービス業ほか」の17.1%。個人生活に結びつく分野での活躍が目立つ。
ただし、上場企業では(代表執行役員を含む)、大塚家具の大塚久美子社長や日本マクドナルドホールディングスのサラ・カサノバ社長らわずか39人(全体の1.0%)にすぎない。前年(2016年)より3人増えただけだ
都道府県別にみると、女性社長が最も多いのは、東京都の10万4641人、次いで大阪府3万5263人、神奈川県2万6232人...と、当然ながら企業数や人口が多い順に続く。ところが、「女性人口10万人当たり」の女性社長を比較すると、東京都が1503人でトップだが、2位に沖縄県972人、3位山梨県870人、4位大阪府769人...の順となった。企業数と女性社長数を対比した「女性社長率」=下図参照=をみても、トップは沖縄県(20.7%)、2位大分県(15.5%)、3位福岡県(15.4%)、4位東京都(15.2%)...と、ここでも沖縄県の躍進ぶりが際立っている。
女性が働く環境がキビシイと社長を目指す?
なぜ、沖縄県に女性社長が多いのだろうか。J-CASTニュース会社ウォッチ編集部の取材に応じた東京商工リサーチ情報部課長の谷澤暁(あきら)さんはこう語った。
「正直、はっきりした理由はよくわかりません。ただ、沖縄は観光旅行客が増えています。そういう人々を相手にした飲食店も増えて、女性社長が多い分野であるサービス業が盛んになっているからと考えられます」
もうひとつ谷澤さんがあげる理由は、沖縄県の労働環境が全国最低レベルで、労働者の非正規率が非常に高く、正規雇用で安定して働く人が少ないことだ。実は、逆に女性社長率が低い県にはある特徴がみられる。女性社長率のワースト5位をみると、新潟県、山形県、石川県、福井県、岐阜県の順となる。これらの県は、女性の正規雇用率が非常に高いという点で共通している。雇用が安定しているから、起業して社長を目指そうという女性は少なくなるというわけだ。谷澤さんは、
「沖縄県の場合、女性が働く環境が厳しいから、逆に起業しようという意欲が高まるのではないでしょうか」
と推測する。
さて、女性社長の出身大学=下図参照=をみると、意外な大学が上位に入った。1位の日本大学、3位慶応義塾大学、4位早稲田大学は卒業生が多いから当然として、2位に東京女子医科大学である。ちなみに医療系大学は8位に日本歯科大学、11位に昭和大学(医学部がある)、13位に東邦大学、22位に東京医科歯科大学、29位に北里大学......とズラリと並んでいる。谷澤さんはこう説明した。
「医師が病院の代表になったり、開業して個人事業主になったりするケースも女性社長になります」
キラキラネームの社長さんはいつ現れる?
おもしろいのは、女性社長の名前だ=図表。1位「和子」が4914人で、8年連続でトップを続けている。2位「洋子」(4322人)、3位「幸子」(4302人)で、この上位3位は前年と同じ顔触れだ。「和子」サンはどうして不動の「女王」の座を維持するほど強いのだろうか――。
谷澤さんはこう語った。
「元号の『昭和』からとったといわれる『和子』は、昭和の初期から昭和27年(1952年)ごろまで、毎年女の子につける名前のランキングトップでした。女性社長の年齢は60代以上がボリュームとして大きいですから、それが影響しているのだと思います。ちなみに上位20位まで、ほとんど『子』がつく名前で、18位にやっと『明美』が入ってきました。21位以下をみると、『由美』(28位)、『真由美』(30位)、『直美』(31位)、『薫』(40位)が名を連ねて、毎年順位を上げてきます。名前の面からも若返りが感じられますから、そのうちキラキラネームの女性社長が多くなるでしょう」
「サヤカ」「アヤノ」「エリカ」「マリナ」社長サンらが増えてくれば、日本経済も明るくなるのだろうか。
(福田和郎)