SDGs(持続可能な開発目標)には「17の目標」があります。
たとえば、「貧困をなくそう」「ジェンダー平等を実現しよう」「気候変動に具体的な対策を」「平和と公正をすべての人に」...... などです=別表参照。これらの目標を達成するために、国は、自治体は、企業は、私たちは、どのような取り組みを進めればいいのでしょうか。
SDGsの目標はお互いに深く結びついている
「17の目標」は、それぞれが独立しているのではなく、相互に関連しています。
たとえば、目標1の「貧困をなくそう」ですが、世界では7億人以上の人が、国際的な貧困ラインである1日1.90ドル未満(1ドル=110円とすると209円※)で暮らしていると推計されています 。
貧困の状態にある7億人以上の人は、食べ物が十分に得られず栄養不足の状態にあったり、衛生的な環境で生活できていなかったり、教育が受けられない状況にあるとみられます。
もし目標1が達成され、貧困が解消されれば、目標2の「飢餓をゼロに」や目標3の「すべての人に健康と福祉を」、目標4の「質の高い教育をみんなに」、目標6の「安全な水とトイレを世界中に」も、達成に近づくことが期待できます。
また、逆の流れも考えられ、目標4が達成されることで、仕事の選択の幅が広がって職を得られるようになり、収入が増えることで、目標1の達成に近づく可能性もあります。
環境について考えてみると、目標7の「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」が達成されることで、温室効果ガスの排出量の減少を通じて気候変動(目標13の「気候変動に具体的な対策を」)が抑制されたり、大雨災害や干ばつが減少(目標11の「住み続けられるまちづくりを」や目標2の「飢餓をゼロに」)したり、目標14の「海の豊かさを守ろう」や目標15の「陸の豊かさも守ろう」にある動植物の多様性が維持されるかもしれません。
地球が抱えるさまざまな問題は相互に密接に関連しており、これらを複合的に捉えて解決を目指すのが、SDGsのひとつの特徴と言えるでしょう。
優先度合いはそれぞれの立場で異なる
「17の目標」は相互に関連しているとはいえ、SDGsの達成を目指すプロセスにおいては、すべての目標に同時に取り組むことが難しい場面も想定されます。
たとえば、開発途上国では、経済成長のために産業の工業化を目指すことが一般的です。工業化による経済成長が実現すれば、貧困が解消されたり、インフラが整備されたり、SDGsが掲げる、さまざまな目標の達成に貢献するでしょう。
一方、工業化の過程では、温室効果ガスの排出量などが増える傾向にあり、環境関連の目標達成からは遠ざかることが予想されます。
「17の目標」に対して、等しく解決を目指すことができれば、それが理想的ではありますが、現実としては難しい舵取りが求められます。
SDGs達成に取り組む主体が、それぞれの重要課題に応じて、「17の目標」の中から優先順位を付けて取り組むことになります。(大和総研 金融調査部・主任研究員 太田珠美)
※ 2015年の数値。貧困ラインは2015年10月に1日1.25ドルから1日1.90ドルに改定されている(出所:WORLD BANK GROUP 「Regional aggregation using 2011 PPP and $1.9/day poverty line」)。