なんでもオレオレ 社長、アナタが阻害要因です
総務部長は常に冷静に物事を見ている人なので、彼の話はおそらく核心を捉えていることでしょう。
となると、G社の事業承継における「適応課題」解決の阻害要因は、じつは社長にこそあったという話になるのです。つまり、社長の「習慣」、最終的に決定に関わらないと満足できない、自分で動かないと納得できないことなどが副社長の行動変革を阻んでいたといえそうです。
前述のハイフェッツ氏によれば、「適応課題」の阻害要因の解決法は、権限委譲を阻む行動をとっている、心に潜む本当の理由を考え、それを意識させて「習慣」を改めさせることであると。
容易に想像がつく、T社長のような権限を委譲する側の経営者が口出しする理由は、「皆から役に立たない、老いぼれのポンコツだと思われたくない」ということでしょう。
長年の実績をもってすれば、そんな心配は不要なはずなのですが、なぜかそうなってしまう。G社のスムーズな事業承継に向けて今一番必要なことは、社長が「ポンコツだと思われてもいい」と開き直れるか否かなのかもしれません。
世の長期政権が続く企業における事業承継の不調の陰には、似たケースがかなり多いのではないでしょうか。近々T社長を再訪して、「社長ポンコツ化のすすめ」をじっくり話してみたいと思います。(大関暁夫)