事態が一変「カショギ氏殺害事件」 トルコリラの買いどきは?
茶系の洗練されたスーツを着たエルドアン大統領の姿は、サウジアラビアと違い、トルコが民主主義が浸透している近代的な国家であることを内外にアピールしているように見えました。
ただ演説では、サウジアラビアの関与を示唆する発言を繰り返しましたが、肝心の「証拠」に関しては、なに一つ提示しませんでした。
トルコは、本当は決定的な証拠を持っていないのではないしょうか? 証拠を持っていたとしても、それを意図的に公表しないことで、対立していたサウジアラビアとの関係を自国に有利な方向に持って行けていることは確かです。
サウジアラビアはトルコを刺激しないように丁重な対応を続けなくてはいけません。また、もしかしたら米国とは証拠を公表しないことで「裏取引」が成立しているのかもしれません。米国はサウジアラビアが国際社会の中で追い詰められることは避けたいはずです。
つい最近まで、米国とトルコの関係は悪化していました。対米関係の悪化がトルコからの資本逃避を促したことも確かです。
しかし、その一因であったブランソン牧師をタイミングよく米中間選挙前に開放しました。カショギ氏殺害事件を、米国と共同で捜査を続けるトルコを見ているだけで、投資家には安心感が広がります。
不幸な事件を利用できるだけ利用しているエルドアン大統領を見ていると、自国の中央銀行を批判していた人と同じ人には見えない、状況を180度ひっくり返す、まさに政治の天才はいるのだと思わざるを得ません。
トルコの中央銀行が必要な利上げを行ったこと、また対米関係の劇的改善によって、トルコリラは買える通貨になりました。依然インフレ率は高いので、割高なレベルで買うのは避けたほうがいいと思われますが、何かのきっかけで下がったとき、たとえば18~19円台があれば、買ってもいいのではないかと思います。(志摩力男)