「移民」受け入れ拡大だが、「社内失業者」対策で人手不足は解消できる!(城繁幸)

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   2018年11月2日、単純労働を含む外国人労働者の受け入れについて閣議決定がなされた。日本はすでに128万人の外国人労働者が働く「移民大国」だが、2025年までにさらに50万人以上が上乗せされることになる。

   政府内では外国人労働者の就労対象業種の拡大も示唆されているため、建設業や介護業といった人手不足の業種以外でも、今後さらなる受け入れ拡大が進むかもしれない。

  • 日本ではすでに128万人の外国人が働いている(写真はイメージ)
    日本ではすでに128万人の外国人が働いている(写真はイメージ)
  • 日本ではすでに128万人の外国人が働いている(写真はイメージ)

2025年までに50万人の外国人労働者が流れ込む

   「経済成長のためには移民が必要だ」という人は筆者の周囲にも意外と多く、前回の記事「いまこそ『移民』を考える 事実上の受け入れなのに議論はなおざり」(2018年10月18日付)に対して、「経済成長をあきらめるのか?」といった質問も何人かからされている。

   だが、じつのところ筆者は移民受け入れに頼らずとも、人手不足に対応する術はあると考えている。

   というのも、終身雇用の日本企業には「仕事はないけど、仕事しているふりをしている社内失業者」と呼ばれるグループが、昔から一定数存在しているためだ。

   リクルートワークス研究所の調査によれば、その実数は2015年時点で400万人にのぼり、今後さらに増加するという。

   筆者の経験で言えば、終身雇用が文字どおり保証される大企業では、だいたい3割が社内失業者に該当するし、中小企業はもっと少ない傾向にあるので、正規雇用3400万人の1割強にあたる400万人という数字に、特に違和感はない。

   そう聞けば、多くの人は「移民よりなにより、まずは社内失業者を国全体で有効活用するのが筋ではないか」と考えるだろう。むろん筆者もその一人だ。

   ちなみに、社内失業者を労働市場経由で再就職させるには、筆者が常々言っているように解雇規制を緩和して、労働市場を流動化する以外にない。

   一つだけ確実なのは、400万人を超える労働力を飼い殺しにしつつ「人手が足りないから」という理由で後先考えずに数十万人単位で移民を受け入れたら、移民問題で頭を悩ませている欧州から「日本人は気でも狂ったか」と心配されるに違いない。

勃発! 仕事しているフリする日本人VSキツイ作業の外国人労働者

   仮に現状のまま実質的な移民受け入れに舵を切ったとすれば、日本国内には「仕事しているふりが許される職場」と、そうでない職場が併存することになる。むろん外国人労働者が送り込まれるのは後者だ。

   たとえば、バックオフィスで仕事しているフリをする日本人が何人もいる一方、第一線の現場でキツイ作業を外国人がやらされる会社があったとして、彼ら外国人労働者はどう思うだろうか――。

   彼らは仕事しているフリなんてできっこないし、資格更新の可否によっては5年や10年でこの国から追い出される不安定な身分でもある。そういうダブルスタンダードに納得してくれるのだろうか。

   「なぜ自分たちとあの人たちは扱いが違うのか」という疑問に対して、氷河期世代の日本人の非正規雇用労働者などは「生まれた時代が悪かったから」とか「努力しなかった本人の自己責任」とか、適当に社会がお茶を濁して、なかったことにしつつある。

   でも、彼ら外国人にそんな適当な言い訳が通用するだろうか。「人種が違うからだ」「いや、宗教が理由だ」という風にナイーブな部分に結び付けられてしまうと、後々非常に問題化するだろう。筆者はそれをとても危惧している。

   解雇規制緩和による労働市場の流動化には、従来から反対する日本人も大勢いた。だが、

「社内失業者を後生大事に抱え込んだまま、人手不足だからという理由で移民を受け入れるべきか」

と問われれば、少なくない数の人が流動化のメリットを理解してくれるのではないだろうか。

   日本は今、重要な節目にさしかかっているというのが筆者の見方だ。(城繁幸)

人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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