プロ野球にみる「長期戦」「短期戦」のマネジメント 人のチカラを引き出す戦い方(大関暁夫)

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長期戦と短期戦の使い分けは有効

   長期戦と短期戦では戦い方を変えるという考え方は、企業マネジメントにおいても意外に有効な話であると、とあるエピソードを思い出しました。

   銀行時代の取引先で携帯電話の販売代理店を運営するT社。もう10年ほど前の話ですが、当時は基本的に半期ごとの携帯電話の販売台数による関東圏順位で通信キャリアからの、いわゆる獲得インセンティブが決まるという制度で、T社は常に上位に位置し、それなりのボーナス収益を毎期獲得していましたが、企業規模の問題もあってなかなか1位を獲るのが難しい、そんな状況にありました。

   そんな折、携帯電話の番号を変更せずに契約を別キャリアに動かせる「ナンバーポータビリティ」という制度のスタートが決まりました。これは通信キャリアにとって、業界の勢力地図を塗り替えかねない、非常に大きなターニングポイントでした。

   そこに契約キャリアから、通常の獲得インセンティブのほかに、期間限定で制度のスタート月の「ナンバーポータビリティ」ポートイン(他キャリアからの移行獲得)件数の関東圏実績上位10社の代理店に、最高数百万円の特別インセンティブを付くことが、T 社に通知されたのです。

   大所も含めた他の代理店が皆、通常の販売体制の中で「ナンバーポータビリティ」獲得にも取り組んでいくという情報を聞きつけたT社のY社長は「ここぞ最大のチャンス!」と、戦略チームの立ち上げを命じました。

   その内容は、法人営業課長をプロジェクトリーダーとする10人でチームを編成して、各店舗の店頭営業、法人取引先営業、地域ローラーなどを戦略的に展開。通常とは異なる1か月限定の短期決戦体制で積極的に「ナンバーポータビリティ」を獲りに行き、関東圏ナンバーワンを目指すというものでした。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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