売り手市場で早期の人材確保を図る企業が多いなか、新卒者の「就活ルール」が形骸化していることが、文部科学省の「2018年度の就職・採用活動に関する調査結果(速報版)」(全国2500社の民間企業と1178校の大学・短大・高専が対象。2018年8月1日現在のまとめ)でわかった。
その一方で、日本経済団体連合会は2021年度以降に入社する学生を対象とした採用選考活動の指針(就活ルール)を撤廃すると、その調査発表の前日にあたる10月9日に発表。混乱が生じている。こうした状況を、当の学生たちはどのように見ているのだろう――。
「本命の面接が6月だった」 学生はルール遵守の企業を無視できず
企業が「就活ルール」を蔑ろにするのは、優秀な人材を確保するため、競合する他社よりも早く学生に接触するためだ。
文科省の企業に対する調査によると、経団連が定める採用選考の解禁日である6月1日以降に採用活動を開始したと答えた企業は、全体の35.5%(前年度比3.7ポイント減)に過ぎなかった。
これに対し、6月以前に採用活動を開始したと回答した企業は全体の62.4%にのぼり、前年度から3.1ポイント増えた。
また、6月より前に学生に「内々定」を出し始めた企業は全体の47.2%で、前年度から7.6ポイント増えた。一方、6月以降に内々定を出し始めた企業は全体の48.8%で、前年度から6.3ポイント減った。企業が早め早めに手を打つ傾向が強まっているようすがうかがえる。
その一方で、学生の就職活動は、あくまでルール上での面接解禁となる6月以降に軸足が置かれていることが明らかになった。
大学などへの調査で、学生が6月より前に就活を終えたと認識した割合は、大企業で3.3%(前年度比1.3ポイント増)、中小企業でも3.3%(同1.3ポイント増)で、いずれも企業の内々定提示率(6月以前)を大きく下回っている。
6月に入ってからも就活を続けたという現役の大学4年生に、その理由を聞くと、
「できるだけいろいろな企業を受けてみたかった」(さいたま市)
「6月以前に内々定をもらっていたが、本命企業が6月から面接解禁だったので就活を続けた」(仙台市)
「有名企業に入りたくて冬のインターンなどを受けていたが、8月に受けた中小企業の1社しか内々定をもらえなかった」(仙台市)
「『インターン=青田買い』になって、採用試験も形式的なように感じた。内々定をもらったものの、そもそも自分たちで決めたルールが守れない企業ってどうなのか。バカにされているような気がして、続けた」(東京都大田区)
「大手企業にこだわっていた人は苦労していた。思っていた以上に(就活ルールを)守っていたみたい」(横浜市)
といった声が聞かれた。
空前の売り手市場の中での新卒採用だが、6割を超す企業が「就活ルール」を無視して早期の採用活動に奔走した。その一方で、ルールを遵守する企業がある以上、就活を「早く切り上げられない」という学生の姿もみられた。